-4- liar
いつだって私はみんなに好かれたかったし、実際好かれていた。
だって、可愛いし、優しいし、いい子だから。
そう見えるように振る舞ってるから。
みんなが好きなのは、上っ面の私。本当の私なんて、私にしか分からないのに。
どうしてみんなあんなに単純で、馬鹿なんだろう。
なんて、私が言えたことじゃないけど。
なのに、どうして。
「ねね、私好きな人できちゃった♡」
「ふーん」
どうして。
「私のタイプ、知りたい?」
「いや、別に」
どうして。
「私…彼氏できた」
「良かったね」
どうして。
どうしてあんただけは振り向いてくれないの?
「私…さぁ、隣のクラスに、気になる人がいるんだけど」
「へぇ」
こちらを見向きもせず、さぞ興味も無さそうに気の抜けた返事しかしない、クラスメイトの卯月(うづき)。
…ムカつく。
なんでこんなに釣れないの。
卯月だけが、私を見てくれない。私は、卯月に振り向いてほしくて、話しかけてるのに。
「…なんであんたは、そんなに私に興味なさげなの?」
色んな感情が混ざり合い、か細い声が教室にふよふよと漂った。
早く、拾ってよ。このままじゃ、私が可哀想な人みたいになるじゃない。
しばらくの沈黙が続いた後、口を開いたのは卯月の方だった。
「…あのさぁ、聞きたいことがあるんだけど」
今まで基本受け身だった卯月が、自ら質問をしてくるなんてなんだか新鮮で、
そして、やっと私に興味を示してくれたみたいな気がして、
少し、嬉しかった。
「ねぇ、聞いてる?」
「あっうん、聞いてる」
今までろくに会話してくれなかったくせに。
そんな苛立ちも今は気にならない。
「四葉ってさぁ…いつも嘘ついてるだろ」
「…え?」
予想外の言葉に、豆鉄砲を食らったような気持ちになる。
「みんなの前でさ、偽者の自分演じてるだろ。」
「…は!?何いきなり!私のことなんか全っ然見てくれなかったくせに!」
二人だけの教室に、私の情けない声が響き渡った。
「図星じゃん。ほら、『彼氏できた』とか『隣のクラスに気になる人がいる』とかも、全部嘘だろ?」
「………」
嘘に、決まってるじゃん。
彼氏なんて作るつもりないし、気になってる人は隣のクラスじゃなくて。
「……卯月は、気づいてたの?」
「何に?」
どーせ、分かってるくせに。
大体、毎日放課後の教室に誘って話しかけるくらいなんだから、気づいて当然なのに。誘ったら来るくせに。
表情一つ変えない卯月の顔になんだかムカついた。
「私が……卯月のこと、好きって」
「うん、知ってるよ」
なんで、そんなに優しく微笑むの。それじゃあ、勘違いしちゃうじゃん。
なんだか悔しくて、机に突っ伏した。
今は卯月がどんな顔をしてるのかも分からない。分からなくていい。
「……嘘だよ、ばーか」
また一つ、嘘をついた。