と め ど な い

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5:乳酸菌0号:2021/05/16(日) 10:01


-4- liar




いつだって私はみんなに好かれたかったし、実際好かれていた。

だって、可愛いし、優しいし、いい子だから。

そう見えるように振る舞ってるから。

みんなが好きなのは、上っ面の私。本当の私なんて、私にしか分からないのに。

どうしてみんなあんなに単純で、馬鹿なんだろう。

なんて、私が言えたことじゃないけど。


なのに、どうして。


「ねね、私好きな人できちゃった♡」

「ふーん」


どうして。


「私のタイプ、知りたい?」

「いや、別に」


どうして。


「私…彼氏できた」

「良かったね」


どうして。

どうしてあんただけは振り向いてくれないの?


「私…さぁ、隣のクラスに、気になる人がいるんだけど」

「へぇ」


こちらを見向きもせず、さぞ興味も無さそうに気の抜けた返事しかしない、クラスメイトの卯月(うづき)。


…ムカつく。

なんでこんなに釣れないの。

卯月だけが、私を見てくれない。私は、卯月に振り向いてほしくて、話しかけてるのに。



「…なんであんたは、そんなに私に興味なさげなの?」


色んな感情が混ざり合い、か細い声が教室にふよふよと漂った。

早く、拾ってよ。このままじゃ、私が可哀想な人みたいになるじゃない。

しばらくの沈黙が続いた後、口を開いたのは卯月の方だった。


「…あのさぁ、聞きたいことがあるんだけど」


今まで基本受け身だった卯月が、自ら質問をしてくるなんてなんだか新鮮で、

そして、やっと私に興味を示してくれたみたいな気がして、

少し、嬉しかった。


「ねぇ、聞いてる?」

「あっうん、聞いてる」


今までろくに会話してくれなかったくせに。

そんな苛立ちも今は気にならない。


「四葉ってさぁ…いつも嘘ついてるだろ」

「…え?」


予想外の言葉に、豆鉄砲を食らったような気持ちになる。


「みんなの前でさ、偽者の自分演じてるだろ。」

「…は!?何いきなり!私のことなんか全っ然見てくれなかったくせに!」


二人だけの教室に、私の情けない声が響き渡った。


「図星じゃん。ほら、『彼氏できた』とか『隣のクラスに気になる人がいる』とかも、全部嘘だろ?」

「………」


嘘に、決まってるじゃん。

彼氏なんて作るつもりないし、気になってる人は隣のクラスじゃなくて。


「……卯月は、気づいてたの?」

「何に?」


どーせ、分かってるくせに。

大体、毎日放課後の教室に誘って話しかけるくらいなんだから、気づいて当然なのに。誘ったら来るくせに。

表情一つ変えない卯月の顔になんだかムカついた。



「私が……卯月のこと、好きって」

「うん、知ってるよ」


なんで、そんなに優しく微笑むの。それじゃあ、勘違いしちゃうじゃん。

なんだか悔しくて、机に突っ伏した。

今は卯月がどんな顔をしてるのかも分からない。分からなくていい。



「……嘘だよ、ばーか」




また一つ、嘘をついた。


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