毎月、必ず一度はやってきて、私の父を殴る蹴る。
父はこの事を、私に内緒にしているつもりらしい。
だけど、こんなにも堂々と暴行されて、気が付かないわけがない。
借金の事だけじゃない、闇金融からお金を借りている事だって、自営業の町工場が潰れた事だって、新しい職場でリストラされた事だって全部知っている。
でも父は私に心配をかけたくないのか、私には一切そんな事言わない。
「佐凛は心配しなくて良い、全て俺に任せてくれ」
父は作り笑いを浮かべながら、いつもそんな事ばかり言う。
けれど、父だけに重荷を背負わせる訳には行かない。
父は知らないかもしれないが、私だってバイトをして働いている。
部活に行く振りをして、居酒屋でバイトをしている。バイト先のオーナーは憐れみの気持ちで私を雇ってくれている。
とりあえず私は、バイト代を食費に当てたり、ちょくちょく家に届く身に覚えのない、恐らく父のであろう請求書を支払ったりした。