お題メーカー:隣との距離
「いや、近いって」
「そう?」
「なんで机に対して、おんなじ側に二人並んで座らんといけんのよ」
彼は声をなるべく押し殺して僕に言う。
ページをめくる乾いた音、机とペン先の擦れるコツコツ音、読み聞かせコーナーからほんのり聞こえる司書の声。
ここは図書館だ。当然静かにしなければならないだろう。
「うるさい」
神妙な面持ちで注意をくれてやった。
「お前が向こう側座ればいい話だろ!ほら隣座ってると腕当たって邪魔だし…!」
「声が大きい。周りの人、迷惑してる」
ここまでいえば彼はすっかり黙り込んでしまった。それから一つため息をついて、やっと課題の冊子に手を伸ばす。
…と、その手がぴたりと止まった。
「やっぱりやめだ!」
そう言いながら読み聞かせコーナーに駆けていく彼をうっすら見ていると、「読み聞かせてる本に登場した場所に今から行くぞ」とユーチューバーの企画みたいなことを言う。
わかったとひとつ頷いた。
そんなこんなで僕らは火山に行くことになった。