Ep1
傲慢、上から、ときどき感謝
夕鴫莉月(ゆうしぎ りつき)が、今の偽名だった。
女の子らしい名前に少し抵抗はあったが、おやっさんが適当にその名前で戸籍とパスポートを作っちまったんで、莉月で通している。
「一流シェフが駐在する食堂、豊富な書物を取り揃えた図書館、バラ園が一望できる中庭にプラネタリウム……素晴らしい設備でしょう!」
「おーすごい、中華料理まで食えんのな」
無駄に広い学園内を案内され、こんな自分がまさか青春を送れるとはな……と不思議な気分に浸っていた。
しかも御曹司や政治家の子供ばかりの名門金持ちエリート校。
1ヶ月のほとんどをもやしと豆腐で乗り切る私には場違いじゃねーか。
「それじゃあ、何かあったら言ってくださいね」
「案内ありがとうございましたー」
厚化粧の見苦しい教師は、私が道端の雑草を食うほどの極貧生まれだったとも知らず、媚びを売るように過剰な対応をした。
それもそのはず、私は寄付金1億で編入してきたのだ。
「青春を謳歌しろ、か……」
掲示板の寄付金ランキングを、私は冷めた目で見つめた。