あなたとの出会いに花束を

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3:暁&◆Dc:2023/09/27(水) 22:51

あなたとの出会いに花束を〜シーン2新宿編〜


東京は連日の酷暑日。

敦は、窓の外を眺めた。
日差しの眩しさを見ると、このあと出掛けるのすら躊躇してしまう。

今日は、ハーフパンツにサンダル…とはいかないな…

ぼさぼさの頭をなんとか整えて、パンツにジャケットを羽織り、キャップ…あ、やっぱりハットにしよう。

ストロー素材のジャケットに似合う中折れハット。



そう、



こないだ相方からプレゼントされたそのハットで。



降り立った目的地は、ぞろぞろと人が集まっている。
報道プレスの中に知り合いを見つけると、同じく関係者入り口へと足を進めた。

「今回の初公開映画さ、舞台関係者多いよね。」
知り合いもそんな雰囲気を感じているようだ。

舞台役者出身の初監督作品、映画撮影も初めての役者ばかり、たしか相方も映画は久しぶりだったよな。

身内…いや、相方が映画に出るのはなんだか緊張するね…


久々に見るスクリーンでの相方。
ストーリーのキーパーソンとして出ているからか、かなり台詞も多い。
撮影だった1年ちょっと前、まだこの時の相方は確か…本調子に戻っていなかったはず…
ひと月で体重が10キロ近く落ち、身体も思うように動かないと、ふらつく身体で現場に出ていたのに。

しかし、流石の役者だな…そんな身体の不安なんて1ミリも見せず見事だった。

上映後に始まった舞台挨拶。

役名と同時に壇上に現れる演者達、撮影衣装での登場は、客席から映画の余韻を思わせる良い演出だった。


相方が役名で呼ばれ、登場すると拍手が沸き起こる。
舞台で一礼すると顔をあげた瞬間、観客席にあのハット。
彼はニヤリと口端をあげた。

簡単な自己紹介のあとは、撮影エピソードや裏話トークなどで会場に笑いが沸き起こる。

写真撮影が終わると、締めくくりの挨拶を相方が行った。

「本日は〜」

敦は、挨拶をする相方を見ていると、懐かしい記憶が甦ることがある。

昔、劇団の主役をしていた頃の彼。

いつも冷静で、その挨拶を舞台の後ろから見て、憧れていたあの頃の自分。


あれから40年経っているんだ。 

ずっと一緒に…ずっとそばに…


長いな…相変わらずだな… 


相方!いや、カッチャン!帰ったらお祝いしなきゃね。




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