本屋ねむねむ

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3:ネム:2022/07/24(日) 00:09


一言で言えば、凄かった。拙い感想だけど、上手い言葉が見つからないのだ。
どのアーティストもよかった。中にはバンドで演奏する人達もいて、本当に心が痺れた。けど、けれど。

「……はぁ」

一番手の、FAKEという女性。彼女の歌声が頭から離れない。綺麗な歌声だった。力強く真っ直ぐな声。一瞬で心を奪われた。余韻に浸りながら、受付で貰ったチラシをじっと見つめる。

どうやらこのライブハウスは規模が小さいだけあって、なんと終演後にアーティストと少し話すことができるらしい。
どうしても、どうしても私は感想を彼女に伝えたかった。ちょうど女の子達と話し終えたらしく、彼女達に向かって手を振るFAKEにそっと近付く。

「あ、あの」

「ん? あ、今日初めて来てくれた……」

初めまして。にっこりと彼女が笑う。ぺこりと頭を下げてから、恐る恐る口を開く。

「……歌、凄かったです。真っ直ぐで、透き通っていて。ええと、上手い言葉が見つからないんですけど……、ふ、ファンになりました!」

「へえ、それは嬉しいな」

「なんというか、全てが美しいなって。素敵な女性だなって、思いました」

FAKEが目を見開いた。
それから何も言わなくなった彼女を見て、かあっと顔が熱くなる。私、なんて気恥ずかしいことを。

そ、それじゃあ! そそくさと階段の方へと足を向けたところで、不意に腕を掴まれた。

「え?」

思わず振り返る。
振り返った先で、顔立ちの整った女性───FAKEは、不服そうな顔でこちらを見下ろしていた。

「俺、男だけど」


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