一言で言えば、凄かった。拙い感想だけど、上手い言葉が見つからないのだ。
どのアーティストもよかった。中にはバンドで演奏する人達もいて、本当に心が痺れた。けど、けれど。
「……はぁ」
一番手の、FAKEという女性。彼女の歌声が頭から離れない。綺麗な歌声だった。力強く真っ直ぐな声。一瞬で心を奪われた。余韻に浸りながら、受付で貰ったチラシをじっと見つめる。
どうやらこのライブハウスは規模が小さいだけあって、なんと終演後にアーティストと少し話すことができるらしい。
どうしても、どうしても私は感想を彼女に伝えたかった。ちょうど女の子達と話し終えたらしく、彼女達に向かって手を振るFAKEにそっと近付く。
「あ、あの」
「ん? あ、今日初めて来てくれた……」
初めまして。にっこりと彼女が笑う。ぺこりと頭を下げてから、恐る恐る口を開く。
「……歌、凄かったです。真っ直ぐで、透き通っていて。ええと、上手い言葉が見つからないんですけど……、ふ、ファンになりました!」
「へえ、それは嬉しいな」
「なんというか、全てが美しいなって。素敵な女性だなって、思いました」
FAKEが目を見開いた。
それから何も言わなくなった彼女を見て、かあっと顔が熱くなる。私、なんて気恥ずかしいことを。
そ、それじゃあ! そそくさと階段の方へと足を向けたところで、不意に腕を掴まれた。
「え?」
思わず振り返る。
振り返った先で、顔立ちの整った女性───FAKEは、不服そうな顔でこちらを見下ろしていた。
「俺、男だけど」