先生、俺と恋をしませんか?

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2:(∵`):2022/08/15(月) 19:58

――放課後。

今やデジタル原稿やリモートで打ち合わせができるけど、私は地方民でもないので月に数回、学校帰りに出版社へ寄って直接担当さんと打ち合わせをしている。

「広川先生、遅くなってすみません」
「あ、大丈夫です!」

柳下幸也(やなぎした ゆきなり)さん。
私がペンネーム、広川歌(ひろかわ うた)としてデビューした時から担当してくれている編集者さんで、今も二人三脚で頑張っている。

「今日は重要な報告があって」

柳下さんは真剣な顔をして話を切り出した。

「重要な、報告……」

まさか……打ち切り!?

今や道具がなくてもパソコンなんかで手軽に漫画が描けて量産できる激戦時代。
せっかく掴み取った連載も、アンケート結果が悪かったりすれば容赦なく打ち切り。
最近では徐々に上がってきてはいたけど……。

「あ、打ち切りじゃないから安心してください。怖がらせちゃいました?」
「そ、そりゃ改まって真剣な顔されたら勘違いしますよ……」
「いやぁ、すみません」

青ざめたような顔をした私で察したのか、柳下さんは苦笑いした。

「というのも、『ビター&ヒロイン』のドラマ化の話が出まして」
「……ドラマ化!? ビタヒロが?! ええぇぇぇ!?」
「はい。今日はその許可を頂きたくて」

ビター&ヒロイン。
私の初連載で、つい先週最終回を迎えた恋愛漫画だ。
俺様系先生の支配と、それに抗うヒロインという王道中の王道作品。

「この尺ならちょうど12話に収まりそうですし、原作は最終回終わってるんでストックもありますしね。どうです?」
「許可も何も、めちゃくちゃ嬉しいんですけど……」

むしろ是非是非お願いしますという感じだ。

「それでキャスティングの方なんですが、ヒロインの夏菜はオーディションで、拓斗は事務所が推しているモデルを起用したい、とのことでして。希望はありますか?」
「よほどイメージから乖離していなければ大丈夫です!」

ぽっと出の私の作品に有名所の女優俳優さんが呼べると思ってないし、私の作品を機に人気が出たらこちらとしても鼻が高い……なんて。
というか主題歌とかもつくよね……うわぁぁうわぁどうしよう、嬉しすぎる!


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