「....は、っぐ、ッハ」
雨でぬかるんだ山道を、走って、走って、走った。
捕まれば命はない。
そうして逃げるように、目の前の大穴に身を投げた。
「ッあ゛!?...っぐ....ッ」
体を起こそうとして、腕に激痛が走った。
目を開けると、片腕があらぬ方向に曲がりかけていた。
「あー.......どうし」
「ねぇ...大丈夫かしら?」おおきな山羊がいた。
驚きで固まっていると、
「大丈夫...じゃないわね、おいで、手当てしてあげる。」と抱えられた。
「...誰ですか?」
いきなり誰かも知らぬ山羊に抱えられたのだから、こちらとてただで抱えられるわけには行かない。