第3話 ジェントルマン
ジャクロシア暦 54367年
「お嬢様、本日は屋敷護衛システムの誤作動がございました、何かなされましたか?」
「いいえ、何もしてないわ、多分」
「多分?」
「すこーし護衛システム作動スイッチの近くにいただけで特に何もしてな」
「それでございます」
「それなの?」
「護衛システムは一歩間違えればこの屋敷を完全に破壊する事態になります故に、これからは
こういったことがないように、お気をつ」
「ねぇ、クロスチャン」
「……はい、何でございましょう?」
「それは、護衛というの?」
「どちらかと言うと、護衛ではなく誤衛でございます」
「うまいこと言ったわね」
「お褒め頂き、光栄でございます」
「まぁ、普通だったけど」
「……お嬢様、そろそろお客様がお見えになられます」
「そう、で、誰?」
「はい、人間とも我々とも似ても似つかない紳士が来るそうで」
「紳士?」
「はい、紳士でございます」
「その紳士が、ここに何の用で来るのかしら?」
「はい、一切説明はありませんでした」
「………」
「いかがなされましたか?」
「もしその紳士が面白半分でここに来るとしたら、私怒るわよ?」
「お嬢様、十分お怒りに」
「なってないわよ」
「……はい」
「さーて、そろそろ来るのかしら?」
「と、思われ」
『メールデス』
「これは何?」
「はい、お屋敷メールキャッチ装置『シルベス』でございます」
「わかったわ、で、メールの内容は?」
「お読み致します、えーっと……『護衛装置の攻撃でこられなくなりました』……」
「………」
「つまり、私が言いたいことは」
「スイッチを勝手に押すなってことね」
「その通りでございます」