「いってきまーす!」
私は、温かい日差しの中を歩いていた。
腰まで伸びた、さらさらの黒髪を揺らしながら、私は桜並木道を進んでく。
交差点を渡る前に、私は綺麗な朝顔が咲いているのを見て、その足を止めた。
「わぁ……キレー」
あ、そういえば、こっちに行ってみたらどこに出るんだろ?
ダメダメ!そんなことしたら、遅刻しちゃうじゃん!
ここは、帰りによってみよー。
―放課後
「うーんと……どこだったけなぁ……」
時は放課後。私はあの、朝顔が咲いている綺麗な道を探しながら歩いていた。
「あっ、あったあった!」
あんまり遅いと、お母さん心配しちゃうから、ちょっとだけ。
ガサガサ……
どこまで行っても、朝顔が続いている道を歩きながら、私は最奥部を目指していた。
カサッ……
「あ……何これ?」
私は血の様に真っ赤な、花火が散ったように咲くそれを眺めた。
「お母さん、この花好きだよね。何て名前だったっけ……」
そうつぶやきながら、何本か花を摘んでゆく。
花を摘み終わって、家に帰ろうとした私の目に、それは映った。
私と全く同じ格好をした、雪のように白い女の子。
その子は、私の顔をしばらくの間見つめてから、口を開いた。
「あなた、それ……」
その、大きな瞳を見開きながら、聞いた。
「あぁ、これ?お母さんが好きな花だから、持って帰ろうと思って……」
「あなた、人間?」
何この子。と、思いながら、質問に答えた。
「うん。もちろん!」
「ここにいちゃいけないよ!早く戻って!!」
「え?」
「さぁ、早く!!その花も捨てて!!!」
「あ、うん」
その子は私の手を引いて、猛ダッシュした。
「あ、ヤバイ!」
前方を見ると、朝顔が出口をどんどんふさいでいた。
ついに、出口が完全にふさがれてしまうと、私達の足場が崩れ、深い闇に落ちてゆくのだった……