あれは飴玉。とってもとっても美味しい飴玉。青色をしているから、きっと食べたら、ソーダの味がするんでしょうね。
それはチョコ。とても大きいでしょ?少し黒っぽいのよ。それが残念ね。ブラックなのかも。
これはりんご。りんごって日に焼けるのかしら?日に焼けるのは健康の証だから、きっとこの赤黒いりんごも、健康なのよね。
「お客様、何にいたしますか?」
メニュー表を差し出すと、お客様はそうだなあと考え込んだ。
どれもこれも美味しそうだから、きっと迷ってるんだわ。数々の料理は、レジ近くの料理のサンプルを見ただけで美味しいものだと分かっちゃうもの。
一応メニュー表には、どういう味なのか書いてあるけど、それはきっと必要ないでしょうね。
だって、見ただけで味が分かっちゃいそうなんだもの!
「そうだね、ではこれを頼もうかね」
あらまあ素敵!お客様が決めた料理は、当店イチオシのステーキだわ!
このステーキ、実は一品に付き、ステーキは二枚なの。とってもお得なのよ。
さすがに大きすぎるし、食べれないって人が多くてなかなか頼んでくれないのだけれど……この人、食のスペシャリストかなにかなのかしら?
わたしは激しくなる動悸を、お客様に悟られないよう、静かに言う。
「かしこまりました。……ちなみに、味付けの方は、どういたしましょうか?」
「ああ、そのままで構わないよ」
「となると……特性ソースも無しでいいのですか?」
「そのまま食べてみたいからね」
やっぱり食のスペシャリストなのだわ!
このステーキを、味付けもソースも無しでそのままなんて……わたしですら、そんなこと考えたことなかったわ!
常連さんになってもらって、いつか弟子にしてもらいましょう。ええ、そうしましょうとも!
「あと、これも」
つ、次はこのワイン……!?
もうダメ、この人、食を司る神なのね……!
「は、はい。では、ご注文の品を確認させてもらいます。10代女子(おなご)の肺のステーキ一つと、生まれたての子供の生き血ワイン一つですね」
「ああ、よろしく頼むよ」
ああもう素敵!なんて素敵なんでしょう!
わたしは鼻歌まじりに厨房へ向かう。
シェフがおや、とわたしを見た。
「珍しいね、君がそんなに浮かれるなんて」
「ええ、師匠がようやく見つかりましたの!」
「ほお……これでようやく、君もこちら側に正式に来れるってことだ!」
「ええ、ええ!そうなんですよ!ああああっ、今すぐ弟子入りしてこなければ!」
きっと、素晴らしいカニバリズムを伝授して下さるはずですもの!