海には歌が溢れている。 電子音のようなアザラシの歌、ギーギーと軋むようなイッカクの歌、ピュイっと短いホイッスルはイルカの歌、ズーンと響く低音は鯨の歌。 彼らは歌で会話する。家族と仲間と恋人と。 もし。······もし、自分の歌が自分にしか歌えないものならどんなに孤独だろうか。 広い広い海でたった独りの歌。 52ヘルツーーーー孤独な周波数