近くにいたせいで、こんな感情が芽生えただとか。
そんな単純じゃない、思い。
君にとって、
重すぎる思いだと分かっていたはず。
毎日、毎日。
すぐ近くにいる権利のある僕。
一生、ずっと、
近くにいられない、僕。
_________、
「なに、菜知。…目ぇ真っ赤」
目も、鼻も、頬も真っ赤に腫らして帰ってきた君の寂しげな瞳に、
僕が映し出されることが酷くひどく嬉しくてたまらないと思う、最低な僕。
「……ッ、……男の人って、あんな人しかいないの?…もう嫌だ……ッ」
僕の顔を見るなり苦しそうに顔を歪めて、
その瞳から今の君に皮肉なほど綺麗な、涙が流れ始めた。
それと同時に、立ち尽くしている僕の横をスルリと通り抜けて部屋へと戻っていく。
君の世界に、
君の辿る道には、
男の人、っていう存在に僕が含まれることはない。
僕が、ずっと守ってきた。
可愛い、可愛い妹を不安にさせないでほしい。
「…ほんと、馬鹿」
気がついたら、電話をかけていた。
可愛い妹にお似合いの、かっこいい彼氏に。
_______、
ガチャリ、
扉が開いた音がする。
勉強する手を止めて、玄関まで行った。
すごく、すごく、幸せそうに微笑んで。
華奢な君じゃ持ちきれないほどの、花束を抱えて帰ってきた。
靴を静かに脱いで、僕の前までやってきて。
君は、少し照れたように下を向きながら
「勘違い、してた。彼がやましいことしてるんじゃないか、とか。
お兄ちゃんが、私のこと嫌いなんじゃないか、とか。
お兄ちゃんのおかげで、幸せ。
ありがとう。
私のお兄ちゃんで、ありがとう。」
笑って見せた君は、急に大人になったみたいだった。
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愛よ、僕を導いてゆけ からの創造