「……へっ、くしっ!……ううっ…いくら水タイプだからってこれは寒すぎだって……くしっ!」
ここは雪の国、"ノエタウン"のはずれにある場所。……なのだが、視界を遮る猛吹雪のせいで目の前の壁が迫っても気がつかないくらい周辺が見えないので細かい現在地が分からない。
……ここまで言えばわかるヒトもいるかもしれない。
そう、ボクは今、絶賛遭難中なのだ。
「ん…?なんだ?アレ……?」
視界の先で何かが動いた。
敵か……?敵なら早く倒さないと…。この状況で襲われたらまずい。
ボクは敵に忍び寄るとーーーー
「先手必勝!"水のはどう"!」
手のひらの中で、水の球体を生成し、相手に向かって投げつけた。
「えっ、わっ!」
相手はギリギリで避けるとダンジョンの奥に逃げていった。
「あちゃー……逃がしちゃった…。」
早めに倒したかったんだけどなぁ……。
ボクは溜め息をつくと近くにあったきりかぶに腰掛け、鞄からりんごを取り出す。
りんごをかじりながら考える。
なんで敵は攻撃しなかったんだろ…?
敵はなんであの攻撃を避けられたんだ?見たところまだバトルは初心者っぽかったけど…。
・・・
「気になるな……あの子……」
よし。
「追いかけてみよう!」
残りのりんごを口に放り込み、立ち上がった。