そうこうしているうちにうさぎがおらへんことに気がつく。そう、あたしをテニスの王子様にトリップさしてくれたあのうさぎや。
どうやら爽加ちゃんと実砂ちゃんはあのうさぎにトリップさしてもろたらしくて。
不思議なことに他の三人はいずれか重傷を負うほどの怪我をしたと思って意識を飛ばしてしまい、目が覚めたらこんな状況だった、と言う。
『とりあえず、うさぎ見っけて拷問して訳を吐かそうや』
「もう僕は告げるとこだよ!」
あたしが指の関節をごきりとならしているとぴょんと飛び出てきたうさぎを見てあたしら六人は椅子に座った。
「で、何ようさぎさん、言ってた事が違うじゃない。トリッパーは三人、そういってなかった?」
爽加ちゃんが聞くと「そうなんだけど……」とうさぎがくちごもり、続けた。
「そこの三人は君達がトリップする時に重傷を負っちゃったみたいでね? 飛んだ意識が生憎にもこの世界に来てしまったんだよ」
「ゴメンね?」と罪悪感を滲み出しながら告げるうさぎにそうだったのか、とみんな納得。
「で? 話はそれだけなのかよ」
いおが腕をつるてんの胸の前で組みながら聞く。うさぎはそれを聞いてううん、首を横に振りながら続けた。
「実はね、僕、神様なんだけど、僕と仲の悪い神様が僕と喧嘩をするために勝負を申し込んできたんだ」
「ぇえ……?」
朱李ちゃんが怯えたように聞き返す。うさぎは「内容がね……」と朱李ちゃんに答えるように話出した。
「えぇと、『俺もそのテニスの王子様の世界に六人、トリッパーを送る。そっちのトリッパーとこっちのトリッパー、どちらが勝つか勝負だ。内容はこう。こちら側は逆ハー補正をするが、そちらは補正無し。そしてその条件で六対六の精神勝負をして俺とお前の決着をつけよう』って。
どうやらこちらに拒否権は無いらしくて……勝負しなくちゃ駄目になるんだ。巻き込んで、ゴメン」
そういううさぎに対してあたしはがたんと立ち上がる。それを驚いて見上げる他のトリッパー達。
『あたしは構わへん! 逆ハー補正するんやったら多分、少数のバグ人物が出るんや! 要するに、や。
少数のバグ人物とうさぎ側トリッパー対学校のほとんどの人物とそっち側トリッパー、っちゅーことやろ?
みんなは知らんけど、あたしは大丈夫や!』
あたしが言い張るとみんな決心を付けらしくこくんとうなずく。うさぎは「ありがとう」と涙ぐみながらあたし達に笑いかけた。