(一章)
「坊やは、今回の事件で酷く苦しんだと思う。だが人は全てを救える訳じゃない。選択は多過ぎて、世界はあまりにも残酷だ。その選択が正しくて、この選択が間違ってるなんて俺にも坊やにも分からない。」
赤いコートを着ている男は一息着いたら言った。
「ただ、どれだけ酷い目に会っても自分で選び取ること、それこそが大事なんだ。」
赤いコートの男に対して少年はこう言った。
『で?』
興味なさそうに。
その黒くにごんだ目を見ていると彼が本心からその言葉を口にしていることが分かった。
漆黒の闇____
悪魔の血が流れ込む少年の中には光という言葉がない。
『僕の気持ちなんてあんたが分かるわけないだろ。』
少年は赤いコートの男___ダンテの横を通りすぎた。
その姿はまるで影みたいに。