続き
ある日、前の子たちと同じ場所で初めて見つけた。同じような悩みの子。何人目かにあった子。黄色いカーディガンを着て、寂しそうに伏せていた。理由を聞いたら、「家に帰りたび、増え続ける痣を消し去ってしまうために来たの、と言った。本当はどうでも良かった。でも、思ってもみないこと。声をかけてしまった。
「ねぇ、やめてよ……」
あぁ、どうしよう。わたしにこの子は止められない。止める資格なんて無いから。同じ苦しみを知っているから。無責任に止めることなんて出来ない。でも、早く屋上から出て行って欲しい。この子を見てると苦しくて堪らないから。わたしのそんな姿を見て、黄色いカーディガンの子は寂しそうに笑うと、じゃあ今日はやめておくね、って目を伏せたまま屋上を後にした。
今日は誰も居なかった。今日こそは、わたし一人だけ。誰にも邪魔されないで済む。誰も……邪魔してはくれない。わたしは一つ深い深呼吸をして、靴を脱ぎ捨て、高い柵を登る。見下ろした景色は最高だった。
カーディガンは脱いで、三つ編みも解いた、背の低い……恋人にも友達にも家族にさえ裏切られたわたしは、今から飛びます。
「わたしのアール」
終わり