実技テストも順調に終わって帰宅。きちんと合格できているだろうか、してくれないと困るなあ。とか考えながら家への道を辿る。
バスに少なからず揺られても、こっちの家は歩と近い。恐らくここら辺には人もいないだろう。
一軒家が立ち並ぶ住宅街の先にある一人暮しをし始めたマンションを目指しながらそう思った。
こっちは存外クールと言うもので、身長もあってかあまり人が寄り付かないのだ。
今は制服ではなく実技テスト時の体操服。体操服では(本当に)辛うじて胸が隠れ顔もあってか男に間違われる。それもあり、近寄りがたい人と思われることが多々。悲しきかな。
あ、実技テストの時遠くの方で雷バリバリ鳴ってたな。電気系だろうか、絶対事務所引く手あまただろあれ。
ふと足元に視線を向けるとキーホルダーの様なものが落ちていた。雷をあしらったようなそれに興味がなく、元の場所に戻そうか悩んでいると曲がり角から金髪つり目が勢いよく出てきてこっちの腹に頭突きを咬ました。
生憎鍛えているのでいたくない。それにどたんしりもちをついたのもそちら。少女漫画じゃキャッとか言って恋が始まるとかそんなんだろうけど、これは違うだろ。
金髪つり目は顔をあげて「悪い」と一言謝ってきた。おお、いけめんだ。
『……や、こっちこそすまん』
すっと手を差し出せば金髪つり目イケメンは一瞬呆けるも、「あんがと」と笑顔で手を取った。引っ張り起こして『こっち、小原いおり』「俺上鳴電気」と自己紹介をする。
どうやら上鳴も雄英高校ヒーロー科を志望しているらしく、受かって一緒のクラスになればいいなと話をする。
どうやら馬が合うらしく、下の名前で呼び合う仲になった。
ふと、電気が「あ」と声をあげる。視線はこっちのキーホルダーを持つ手へと注がれ『……これか?』とこっちは同じ様に視線をやる。
「それ俺の! 帰りに無くしてたのに気が付いてさー」
『……めっちゃ偶然やな。ほら』
キーホルダーを投げ渡すと「おー」と返事が返ってきて「じゃーないおりー」と電気はもと来た道へと帰っていった。
仲が良くなれたなぁとしみじみ思っていると、あることに気が付いた。
こっちは今体操服で、胸もギリギリ隠れている。顔立ちも身長も男。一人称もこっち。声も低い。
もしかすると電気はこっちの事を男と勘違いをしているんではないだろうか。
……もし彼と同じクラスだった時、不安である。
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