二次創作置き場

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2:ヱノ◆xg 獣の奏者:2016/07/03(日) 10:42



やや切れ味の悪そうな包丁の音が遠くの家々から響く。
(名前)は軽い欠伸をし、寝台から身を起こした。
昨日の夜にした書き物で軋む肩や首、腕を回しながらも麝香のような甘い匂いを纏う服に袖を通した。
ふと日が何時もよりも高く登っていることにふと気がつき、急がなければ大変な事になる。と思い朝食を食べる事なく身支度を始めた。
大公領では米が主食だが、真王領に生まれ育った(名前)にはまだ慣れない。
大分形が不揃いで所々焦げ付いているファコを日々焼き食べている。
焦りながら靴を履き、闘蛇が住まう岩房へ向かう。
息を乱しながら走っている途中、音無し笛が無い事に気がつき、急いで家に戻った。

獣ノ医術師。それが(名前)の職業。
獣の穢れに触れ、いつ闘蛇や王獣に喰われるかもわからない。
幼い頃は、近所の職人階級の子らと飯事などで遊び、獣に興味を示した事も無かった。
__きっかけは、闘蛇。光をはじいて七色に光る鱗や、麝香のような甘い匂いに惹かれたのだろう。 
獣ノ医術師になることが、こんなにも(名前)の人生を変えたのだろうか。
いつか、どこかで何かを間違えてしまったのだろうか。
それはまだ、誰にも分からないことであった。


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