「なあ、エルザ…。さっき言ってた、序列が何とかってやつは…?」
「あ、ああ…。今のところ一位はゴッドセレナというお方だったんだ。でも、それはこのイシュガルでの序列であり、世界での序列を、評議員が頑張って作っていたんだ。そしてその一位が…」
エルザが止まり、伏し目がちでこっちを見る。言っていいのか?と、聞かれてるみたいだった。
私は唾をのみ、前に一歩進む。
「そう、私」
でも、さっきとは違う空気だった。
さすがにここまでくると、ある程度の予想が出来ていたのだろう…。
足音に気づき、視線を上げる。そこにナツが立っていた。
「ルーシィ、俺は自分の中でいろいろと整理したいし、踏ん切りもつけてぇ。だあから、一回でいい。戦ってくれないか?」
「私なんかでいいの?」
声がかすれる。
「…え?」
私なんかで、ナツの相手をできるのだろうか。いままで近くで、ナツの強さを見ていた。
私は、勝ことができるのだろうか。
いや、違う。
私の中でも、いい加減踏ん切りをつけなければいけない。
勝てるか、じゃなくて、勝つんだ。
私の力、本気を出すんだ。
「よろしくお願いします」
私は、ナツに握手を求めたが、「試合が終わった後な」と言って、笑った。それにつられて私も笑みがこぼれた。
外に出ようとしたナツに、「待って」と言って、引き留める。
指をパチンと鳴らすと、ギルドの中に、箱が出てきた。
「たとえ外でも、ナツだったら何を壊すかわからないでしょ?これは、結構簡単だけど、絶対防御魔法の一つ。だから中で暴れても、外には効果なし。中にラクリマが仕込んであるから、皆はそれを見ればいいわ」
「すげーな」
ナツは箱に触れると、感嘆の声を漏らした。
「先入ってるぜ」
「うん」
私も入ろうとした時誰かが言った。
これは、試合でも、二人だけの戦いじゃないんだと。
これは、フェアリーテイルの戦いであるんだということを…。
その言葉をかみしめて、中に入ると、スクリーンが現れ、ナツの待機している様子が見られた。
そこに、ルーシィも現れる。
「始めるぜ」
いきなり、ナツは挑発してくる。私の本当の強さを知らないからだ。
絶対に私は勝つ。
私が右腕を上げ、払うような仕草をする。
ナツは、いつの間にか飛ばされていた。
一瞬だった。
「…」
ギルドの中は静寂に包まれていた。
ウェンディーは、ハッとしたかのように立ち上がるとはこの中に入ろうとしたが、それをマスターが無言で止める。
「見ろ」
スクリーン上ではルーシィは気を失っているナツに近寄り、自分の胸に手を当て何かを唱えるような仕草をした。
ナツが、その瞬間光った。
「嘘…。まさか攻撃したの?」
誰の声だったのだろうか。
「違う…」
よく見ると、ナツの体は傷一つなくなっていた。
ルーシィはナツの顔を軽くペチペチとたたいた。
ゆっくりと、目を開けた。
「回復魔法…」
「しかも、凄い高度な魔法だわ」
そして、箱は、ナツとルーシィが出てくると崩れ、跡形もなく消えた。
二つの影があり、ナツはまったくよろよろしておらず、しっかりとした足取りで笑顔だった。
「やべぇよ。ルーシィめっちゃ強い。もしかしたら…」
マスターを見て呟いた。
「じっちゃんにも余裕で勝てそう」
その言葉は、風となって消えたのだった。
to be continued