ルーシィside
『ところで、グレイは居るかい?』
大魔闘演舞後に改修した新しく広いギルド内を見渡し、怪訝な顔をする。なんでグレイ? と思ったがミラさんに「イオリはグレイと同い年で仲が良いのよ」と聞かされ納得してしまった、っていうかイオリって18だったんだ……もう少し上かと思ってた。
生憎とグレイはジュビアと二人で仕事に行っているが、もう少しで帰ってくるんじゃないかと思っていればタイミング良く二人が帰ってきた。
「ただいまー」
「ただいま戻りました」
グレイを見付けたのか『グレーイ』とカウンター席から振り返り軽やかに手を振るイオリ。ジュビアからの嫉妬がヤバそうな気がするんだけどあたし……。グレイは「お、イオリー」と笑顔でやって来るのだからタチが悪い。隣のジュビアはイオリを睨んでるし。
『ご無沙汰しているなグレイ、また今度飯でもいこう』
「おー」
そこでやっとイオリがジュビアを認識し、ピタリと固まった。グレイをご飯に誘った姿のまま。そして視線はジュビアに向けたままやけに静かな声で『グレイ……この子は、』と真剣な顔付きで問う。さすがのジュビアもたじたじで、冷や汗を垂らした。なんか、ちょっとキレてる?
それに気付かずグレイが「ジュビアだよ、お前が居ない間に加入したんだ」と返せば『そうか』と短く言葉を発する。
そして次、イオリが動いた。
『だああああ!!』
「いだあああああっ!! っぎゃああああ!!」
イオリがグレイの頭を勢い良く拳で殴った。ジュビアは何を勘違いしたのか知らないが「……恋敵」とぽつりと呟く。が、イオリがグレイを殴ったのはイオリがグレイを好きだと言うことではなく。
『お前にはもったいないぞこんなに可愛い子は!!! 雪山で一年修行して出直して来たまえこの変態露出魔バカめ! いつからお前はこんなに可愛い子を毒牙に掛けたのだ!!!』
「「「「えぇ……」」」」
怒鳴り声が酷いが喋っている内容がもっと酷い。明らかにグレイが……と言うか周りが残念な視線を送っている。ジュビアはジュビアでびっくりしてるけど。
顔は格好良いし胸もあたしと変わらないし身長は高いし紳士的なのに、こんなに残念だとは……。残念なイケメンだ。
ミラさんが苦笑いをしながら片手を頬に添えて小声で「イオリも気付かないわね」と言ったのを拾い、どういう意味かと問えば「グレイは小さい頃からイオリが好きなのよ」と衝撃発言。
それがたった今拳骨を食らわされたのだから可哀想さこのうえない。
だがイオリは唖然とするグレイを放置しジュビアへ向き直りその紳士的イケメンスマイルを向けて話し掛ける。
『名前はグレイから聞かせていただいたよ、ジュビア。見苦しい所を見せてすまないね。
とは言え君みたいな可愛い子にあんな変態はもったいない。
お詫びと言ってはなんだが今夜暇なら一緒に夕食でもどうだい?』
「え、あの……その…、」
頬を染めて戸惑うジュビアに同情する。確かにイオリは残念だがイケメンだ。加えて紳士的スマイルを間近でされれば多分あたしもこうなる。
ちらちらとジュビアがグレイにどうすれば良いかと視線を送るがグレイはグレイで勝手に拗ねて背中に影を背負いながらミラさんに水を頼んでいた。変態や露出魔と言われたのがキタらしい。可哀想に。
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