幼い頃から居合いが大好きだった。物心つく前から触っていたと俺は思う。
だけど俺には才能があると師匠は言った。親はそれはそれは、と喜んだ。
俺は学校で有名になった。『焔の隻眼剣士』として。みんなざわざわとうざったらしくて、右目の眼帯は厨二病か、とか聞かれるからイライラしてこれは個性の副作用だと教えるとホントに? と疑われ、証拠に右目の眼帯を捲って無くなった右目を見せる。眼球が消えたので瞼をそ閉じて居るが、それでも窪んで居るのが分かる気持ちの悪い目。それを見て回りは引いて俺から離れていく。
見せろと言ったから見せたのに、見せれば離れていくなんて人間は矛盾している。
そんなことを小学二年生にして道場で自分の個性の刀を素振りしながら考えた。
そんな俺ももう中学生だ。
背中に袋に入れた政宗を携えて白い手袋を手にはめながら新しい制服で歩く。
ここ、凝山中学の制服はブレザーらしい。下手にセーラーとかじゃなくて良かったと安心する。
実は数日前にこの近辺に引っ越してきたので知り合いは居ない。ラッキー、だとか内心思いながら無表情を貫く。
クラス表を見れば、クラスを拝見し、他はすごくどうでもいいのでさっさと教室に移動する。
教室に移動すればするで女が寄ってくる。どうせ世の中顔だ。自分の顔が男寄りの俗に言うイケメンだと言うことは自負している。俺はそう認識しているだけで、別に自分の事が大好きなナルシスト等ではないので勘違いしないでいただきたい。
俺の席の周りでキャッキャ言う女の子に普段あまり使わない表情筋を動かして微笑みを向ける。
途中で眼帯の下を見せてと言う子が居たが、『眼球が無くてえぐいからやめた方が良い』と告げておいた。
同じ教室でそんな俺を見つめるオッドアイがあったことを俺はまだ知らなかった。
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