事件は合宿一日目の夕方に発生した。
俺達1-Aはキツい訓練を終えて晩飯を食おうと合宿宿舎へと舞い戻ってきた。とは言っても、俺は轟を待ってたからみんなは先に行っちゃったんですが。今ごろ部屋で体育着から私服に着替えてるんだろうけど。
『あー、腕いてえ』
「お前なにしてたんだよ……」
『何って、ずーっと刀の素振り』
俺達がそんな他愛ない会話をしながら合宿宿舎のロビーに足を踏み入れれば、宿舎で働いている従業員の人達が大勢居た。何事かと轟と顔を見合わせてそこへ体育着のまま駆け寄る。
『どうしたんすか!?』
「何かあったんですか?」
「ああ! 君達は無事なようだ! よかった、中には入ってなかったんだね!」
その人の安心のしように俺達が首を掲げれば、彼らは内容を話してくれた。
つまり、まあ1-A以外に宿舎に泊まりに着ていた客が晩飯を食いに食堂へ集まった。だがしかし、調理室で料理していた女性二人はとんでもなく料理が下手だった! どこぞの黒いバスケの監督とマネージャーのように! 結局ダークマターしか作れずそれを出したと言う。クレーム覚悟で出したのだが、客が面白がって全員で食べてみた。そして最悪なことに女性の片方が興奮剤の個性持ちで、あまつさえ振りかけたと言う。そしてダークマターを食べた客は同性への性欲をあらぶらせてしまい、1-Aの彼らを探しにいったと言う。
そりゃまあ災難なことだなと遠い目をする俺だが、外に連絡したかと聞けば一味に電話線を切られて掛けられないと言う。何てこったパンナコッタ!
幸い女子は行動が早く、全員が一階に集まっていた。他にも甲田、障子、峰田、佐藤、尾白が無事だ。
ダークマター製造者二人の予想なら効果は六時間だろうと言うことだ。……六時間か……。
遠目で事態に頭をこんがらせている彼女達を俺は置いておき、上の階へと繋がる階段をバリケードで封鎖し、俺達がそこから通ったり出来るように合言葉を決める。とりあえずは残った1-Aを俺は助けにいくつもりだ、轟もらしいが。
そんな感じで六時間に渡る俺達の同性防衛戦がいま始まった。
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