第2話昔も今も・・・〜ガゼル視点〜
「姉さん、何処行くの?」
姉さんは人間の格好をしながら何処かへ行こうとしていた、私が呼び止めると姉さんは此方に振り返って樹海で散歩をすると言った。
そう言えば、姉さんは月に一度だけ樹海を散歩する事がある。
「私も行っていい?」
「えぇ、良いわよ」
姉さんはいつもの冷たい笑顔ではなく小さい頃から見せていたあの優しい笑顔をしながら、頷いた。
私も人間の格好をしながら姉さんの後に付いて行く、昔から姉さんは私の事を気に掛けて優しくしてくれた。
だから、憧れの人でもあり尊敬できる人でもあった。
泣き虫で人見知りだった私を姉さんはいつも傍に居てくれた、今は・・・どうだろう?今は姉さんにはバーン・・・南雲晴矢と言う大切な人が居る、私は未だに姉さんの傍に居ていいのだろうか?バーンと話している時の姉さんを見ればそう思った。
「風、此処は危ないから気を付けてね」
「うん、分かってるよ。姉さん」
姉さんの差し伸べられる手に私は捕まりながら木々や岩を下りて行く。
「姉さん、はしゃいでると転ぶよ?」
「大丈夫よ、あたしもそこまで子供じゃないわ」
昔からこう言っては、すぐに転ぶのが私が見る当たり前だった。
「痛ッ!」
「ほら、言ったすぐに・・・」
「ごめんね」
私は姉さんを立たせて怪我をしていないか確認する。
「怪我はしてないわよ」
「姉さんったら、私が言ったすぐに転ぶんだから・・・。」
「ごめんね、アイスでも買いに行こうか」
アイスと聞いて私は嬉しさが込み上げる。
小さい頃からアイスが好きな私は姉さんと何処か出かける度にアイスを強請っていた、今はそんな事してないが・・・。
樹海を抜けて私と姉さんは誰も居ない場所でエイリアボールを蹴る、エイリアボールで出たのは小さな町だった、私と姉さんはすぐに近くのコンビニに行く。
私が選んだアイスはソーダ味で姉さんはチョコ味、それも昔から変わってない。
「姉さん、もう空が暗いね」
「そうだね、早く帰らないと父さんに怒られちゃうね」
「うん」
「そうだ、今日のお茶会にアイキュー達も呼ぼっか?」
「そうだね」
コックリ、コックリする私に姉さんは眠いのかと聞いた。
私は目を擦りながら姉さんの服の裾を掴む。
「ほら、風」
「ん・・・」
「重くなったね〜」
姉さんは私を世に言うおんぶをしながらそんな事を言った、姉さんは私に上着を掛けて歩いて行く。
私は姉さんの上着から香るミントの匂いに眠気が更に押し寄せる、それが分かってか姉さんは子守唄を歌ってくれた。
私は双子の弟、姉さんは双子の姉、それは死ぬまで変わらない関係だけど・・・今は死ぬまでこの関係を楽しもう、それが私が姉さんに対する愛情だから・・・。
「おやすみ・・・風介・・・」
姉さんの言葉を最後に私は姉さんの背で眠った。温かみのある背中で・・・。
第2話終了