カゲロウデイズが終わり、八十年後。
「セト……今までありがとう。私を連れ出してくれて、みんなに会わせてくれて。大好きだよ。ずっとずっと、私の一番はセトだからね。」
静かに目を閉じる彼の前でそう呟く。
もう私以外誰もいない。
あの時からの、あの夏からの秘密基地に集まる人は、私以外誰も。
彼は最期まで笑っていた。
とても優しい人だった。
ううん、彼だけじゃない。あの秘密基地に集まる仲間は、みんな笑っていなくなった。
みんな顔が変わって、成長して、おじいちゃん、おばあちゃんになって。
それでも笑顔はあの時のまま、みんな楽しそうに、優しく、笑って……。
「私も早くみんなの所に逝きたい。……なんで、私だけ生きているの。なんでみんなと時間が違うの。私、やっと知らない人とも話せるようになったのに。お茶だってもう零さない。守ってもらうだけじゃない。みんなと同じ場所に立てたのに、於いて逝っちゃうなんて酷いよ。」
後からあとから涙が流れて落ちていく。
冷たくなった彼の手に落ちていく、まだ温かい私の手に落ちていく。
「……女王、まだ僕がいるよ。」
後ろから私に声をかけたのは私が作り出した蛇だった。
あの子に、あの秘密結社の最初の団長にそっくりな蛇が、扉の前で静かに立っていた。
「焼き付ける、」
私の喉から出た声は嗄れてとても自分の声とは思えなかった。
思わず声を止めた私に蛇は優しく微笑んで手を差し伸べた。
「行こうよ女王。主が待ってる。隠すも、冴えるも。まだ女王は独りじゃないよ。」
よく見れば蛇の後ろにはあの終わらない世界への入口が開いていた。
全ての始まりの、あの世界への入口。
私は最後に一度、彼にキスをして蛇の手を取った。
黒い真っ暗な懐かしい場所に、私は飛び込んだ。
To be continue……?