「サボテン」
第一話
ジリリリリリ!!
「ん…んぁ…ふぁ〜…うわ!もう八時かよ!」
目を開けると、母が立っていた。
何故だか一瞬分からなかったが、俺はパッと思い出した。
今日は卒業式だ!いよいよ中学校生活ともおさらばだ。
朝から頭が冴えている…!
…。いやいや、こんな大事な日に忘れていたらダメだろ!冴えてるとかじゃない!当然だ!
「おはょ…痛っ!」
朝の挨拶をする前に母の平手打ちが挨拶がわりに飛んできた。
「何時だと思ってんのよ!八時半から始まるでしよ!ほら!レーズンパン焼いといたから食べていきなさい!母さんも後からいくから。」
「ぃってて…。わかった、じゃあもう食べていくよ…」
確かにそうだ、卒業式が一番大事だろ!
カッコよく言えばガリョウテンセイ…とかいうんだろうか。
「行ってきまーす」
そういえば、何でいつも優しい母さんが厳しかったんだろうか…
走りながら自問自答を繰り返した結果、出た答えは、やっぱり「卒業するから」なのだった。
そうか、あと1ヶ月もすれば俺は独り暮らしで志望高校へ行くんだ。
「着いた!」
着いた時間、実に微妙だった。
「28分…」
つい顔が歪んだ…
俺を見ていたクラスメイトがどっと笑った。
「な、なんだよ!(笑)」
そうか、こんな楽しいやり取りも今日で最後だ。
*
無事準備も卒業式も終わった。
俺は真っ先に教室を出た。そして歩いてゆっくり帰った。
だが、家まで近づいたときだった。
「……!!」
俺は走り出した。
何故か…。
誰かに追われた訳でもない、大事な用事を思い出したわけでもない。
ただ、無性に家に入りたかっただけだ。
家に帰ると俺の荷物の積み込みはありがたいことに終わっていた。
母さん、父さん、それから妹も荷造りしてくれていた。妹は今日小学校を卒業した。
夕飯は、家族で温泉宿で食べた。
温泉は、家族風呂に入ったが、俺は妹と話したいことがあるから、兄弟と夫婦で分けることにした。
だがしかし、中々ないだろう。約3歳離れた中学生以上の異性兄弟が二人きりで風呂にはいるとは。
言い出したのは俺だが、決して淫らな思いで言ったわけではない。
「…一体何年ぶりだろうな。美優と二人で入るのは。」
「とにかく久しぶりだよね…///」
「お前も中学頑張れよ。」
「うん。友達もたくさんいるし。そういえばお兄ちゃん、私と入って平気なの?」
「え?全然。」
んな訳あるか!お前は新中学生だぞ!いくらそれが目的じゃなくてもそう考えるだけで鼻血たれてきそうだよバカ!
「私さ…ついてく。」
「……へ?」
驚きを隠せずまた顔を歪ませてしまった。美優が笑いをこらえているのが分かる。
「本当にか?遠いぞ?」
「お母さん達が良いっていったらね」
「わかった、いいよ。」
「やった!」
そのあとも色々話し、いよいよ、旅立つ日が来た。
「じゃあ、行ってきます!」
「気を付けてな!」
「頑張ってね!」
電車が走って行った。
これから俺たちの新しい、そう、ニューライフが始まるんだ!
続く