明るい照明が光る中
目を回して気を失った事を知らぬ魂
(…クソッ…なんなんダヨ
ランディアめ
ボクが ハルカンドラからはなれるトキを
ねらうタメに ワザとあんなマネを
………………………………………)
信じられない事に
瞳には再び夢魔が映っていた
む?お前、我を見ているのか
「…ナ……ナンデ オマエ……!?
ユメはもう 終わったハズなのに」
ほほぅ…これは面白い事態になっているな
「じょ、ジョーダンじゃないヨ!!
っていうか、ユメじゃないのになんでオマエいるんダヨ!??」
言っておくが、現実のお前は今、気絶しているぞ
「き、きぜつ…ダッテ…」
眠っているに等しい今のお前の状態…
其れは我が力が及ぶ範囲内
強い願望を持つ者は我の姿を捉えるが、それは今迄一度きりであった
お前は余程マスタークラウンが欲しかったようだな
「オマエのせいで 全ク ほしくなくなったケドネェ…!」
それでも一度は我に見せたシナリオ
取り消せば、客は失望し全員即退席するであろう
見慣れた景色は気が付くと暗転のステージ上に切り替わっていた
パッとスポットライトが当てられると、眼前に上から下まで埋め尽くすほどの客席の椅子のようなものがうっすらと見えた
そこから喝采の意を発せられている事にも気づいた
見よ!
この観客席の広さを
お前の舞台を、この満席の数が待ち望んでいるのだ
聴こえるだろう、この数知れぬ拍手の音が
馬鹿げている
あんな非現実が実現されるわけがない
なのに…どうして頭ではこんなにも恐れている
「………コレは、ただのゆめダヨ
2ども 惑わされてたまるカヨ
だいたい、キミのみせるユメが 現実でおこってたまるカヨ…!
イヤ!キミの、キミじしんの夢を 叶えさせてたまるカヨ!!
そうダヨ!現にボクは、ローアに指示を出して
ほかのホシに行くことにしていたンダ!
ハハハッ、ざんねんダッタネ!
キミのかなえたい夢は ボクには叶えられないンダヨ!!」
気が付くと必死になって否定している自分が馬鹿らしいと思いつつも
本当に実現してしまいそうな力を持っていそうなこの魔術師相手に
心を壊されまいと自然と言葉を並べていった
少し意識が夢から遠のいていく感覚を感じる
………面白い事を言う
ではその言葉通りに事が運んでいるかどうか
確かめてみるがいい
拍手の音が消えていくと同時に、意識が現実に戻っていった
(…ココは…)
(…ローアの中で、いつの間にか 寝ちゃってタのか…)
(イヤ、きぜつさせられて…?もしかしてあのトキに 目を回して…)
(…ローアはぶじカナ いちおう、完全停止は免レタようダケド)
(それにしても、このニオイ…ドコカで嗅いだコトあるような…)
鼻をくすぐるは、生クリームと酸味のある果実の香り
ある一つの洋菓子の画が頭に浮かぶ
(でもコレ、たべたコトないハズなんダケド…)
嗅覚が頭に信号を与えて再現されるその味は
記憶を奪われているままに
鮮明に蘇った
混乱と不安が渦巻く中、目をそっと開けてみると…
望まぬクライマックスへ向かう約束されたシナリオが
既に序章を迎えていたのだった