「痛っ……」
「あ……」
おそ松の小さな悲鳴と、チョロ松の絶望したような声が重なる。
「ん? どしたチョロ松」
「あ……あ……!」
先程の衝撃で、フィギュアがごとりと床に落ちてしまったのだ。
そこまではチョロ松も「もう、何やってんの……大丈夫?」で済む話。
だがそれだけでは済まされなかった。
____倒れたフィギュアは脆く、あっさりと首が折れてしまっていたのだ。
チョロ松の怒りがヒートアップする。
隣で悪びれる様子も無く頭上に疑問符を浮かべるこのクソ長男を、今すぐにでも殴り倒したい。
そんな感情がチョロ松に芽生える。
「こんの……クソ長男がァァァ!!」
____そして、今に至る。
「ほら! 謝れよ! 「にゃーちゃんの可愛さも知らずフィギュアを壊してしまい申し訳ありませんでした、弁償は出来ませんがその代わり一生チョロ松様の僕になります」って言えよ!」
「誰が言うかこのチェリーボーイ!」
激しい論争が繰り広げられる。
「ね、ねぇ……ちょっとヤバくない?母さんに怒られるって……」
「煩い……」
「喧嘩!? 喧嘩!?」
弟達がぎゃあぎゃあと騒ぎ始める。
そして、二人がついに殴り掛かろうと構えた時。
「フッ……争いは何も生まないぜBrother……」
____カッコつけたイタい台詞で登場する、松野家次男松野カラ松。
彼なりに喧嘩を静めようとしたのだ。
だが。
「クソ松は黙ってろ」
「ごめんちょっと消えて」
当の本人達に死んだ目で訴えられては、カラ松はどうする事も出来ない。
「ん〜?」とクソグラサンをくいと上げる。
こんな事は日常茶飯事。
カラ松の精神は、『こんな事』では崩れないのである。
そう、『こんな事』では。