ここは帝光中学校。
バスケットボールの超強豪として知られる中学校である。
部員数は100人を超え、全中で3連覇を成し遂げた実績を持つ。また高校で活躍する選手のほとんどが、帝光中バスケ部OBである。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「外周10周だ。行くぞ。」
『おおう!!!』
赤いポニーテールが揺れる。彼女の隣や後ろでは、背の高い男たちが走っている。
彼女の名は、赤司征華。
後に、『キセキの世代』と呼ばれる世代を影ながら支え、育てあげる。
「はあっはあっ…監督、すげぇよな…女なのに俺たちについて来て…」
「バカめ。あいつは自分でできるメニューしか俺たちに寄越さないのだよ。」
「ま、自分にできないメニューは人にはやらせないってやつっスね」
「けど、あいつのできるメニューの範囲が広いからどっちみち疲れるけどな」
3人の男の名は、緑間真太郎、黄瀬涼太、青峰大輝である。後にキセキの世代と呼ばれるうちの3人である。
「でも赤ちん、外周のあとすぐいなくなるよねー」
「どこで何をしているんでしょうね」
赤司を心配する男の名は、紫原敦、黒子テツヤだ。この2人も、後にキセキの世代と呼ばれる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「おい赤司」
彼の名は虹村修造。キセキの世代を含む、帝光バスケ部をまとめる主将だ。
「…なんですか虹村さん」
赤司は体育館の中ではなく、体育館の裏で1人しゃがみ込んでいた。
「お前、外周キツイなら別にしなくていいぞ。監督の仕事、充分にこなしてるじゃねぇか」
「それじゃ部員が納得しないでしょう…?俺は2年ですよ?3年の先輩方に普段偉そうに言ってるくせに、外周の10周や20周走れないなんて、顔向けできません…」
虹村ははぁ、と溜息を吐いた。
確かに赤司は2年で女子だが、部員に与えるメニューはどれも効率良く強化することができる。彼女が監督をするようになってから、以前よりも部はまとまり、強くなった。
感謝していない部員など、誰1人といないだろう。
「…お前、俺が迎えに来なかったら休憩の終了時間分からなくて、遅れて俺に怒られんぞ」
「っはは、なんですかそれ。…それに、虹村さんは絶対に迎えに来てくれるでしょう?」
小悪魔のように微笑む赤司に、虹村は少しだけ頬を染めた。そして、すぐに目をそらす。
「……今度から迎えに来てやんねぇからな」
「それはひどいですね」
静かに笑う赤司に、手を差し伸べると素直に握る赤司。立ち上がって体育館へ向かう。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「あ、赤司っち!」
「えー、虹キャプも一緒だし」
「おい紫原ゴルァ!俺がちゃダメなのか!?」
自分の隣から離れる虹村に少し寂しさを感じる赤司。
「……?」
「どうかしたのか?赤司ちゃん」
「いや、なんでもないよ。それより、桃井…この手はなんだ?」
赤司が視線を落とすと、中性的な顔立ちの男が自分の手を握っていた。彼の名は、桃井さつや。バスケ部のマネージャーであり、青峰の幼馴染である。
「空いてたから、つい」
「離せ。休憩時間が終わる」
「終わるまで♡」
桃井は意外と頑固者だ。赤司は諦めた。すると、桃井は嬉しそうに握る手に力を込めた。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「あー!桃っちと赤司っちが手を繋いでるっス!!」
「あ、テメ、さつやゴルァ」
「落ち着け青峰。たかが手を繋ぐぐらい…」
「そうだよ!落ち着けよ大輝!」