小「けど、そんな時に、朝日先輩が私のたこ焼きを買ってくれました。その時に、やっとお客さんの事を思い出したんです!」
それも、凄くわかる。
−−−所詮僕は!姉さんのおまけでしかないんだ!
僕が初めてソロライブをする時、ゲストで姉さんが出る事になったあの日。
そこに集まったのは香澄朝日のファンじゃなくて、香澄夜空のファンだった。
最初は、お客さんがたくさんいた事が嬉しかった。
だけど、姉さんがステージに立った瞬間の歓声が、僕のステージのはずなのに僕よりも大きかった。
その日のライブは僕じゃない人の力で大成功。
男子生徒の中でもトップに入る観客動員数だった。
でも、それは姉さんがいたからであって、僕の力じゃない。
その日の夜、僕は姉さんと初めて喧嘩した。
朝「もう二度と!僕と同じステージに立たないで!」
夜「っ……!朝日は、私の事が嫌いなの?」
朝「このままだと本気で嫌いになりそうだよ!今日のライブに集まった人達だって、所詮は姉さんが見たくて来たんだ!僕の、初のソロライブだったのに……!」
そう言ったら、思いっきりビンタされた。
夜「……呆れたわ。じゃあ、私がいなかったら今日のステージは成功しなかったって言いたいの?」
朝「当たり前だ!誰も香澄朝日になんか見向きもしなかった!所詮僕は!姉さんのおまけでしかないんだ!」
夜「なら、今すぐにアイドルなんかやめて、父さんと同じ道を辿りなさい?」
朝「そんなバカみたいな事するわけないだろ!」
夜「バカなのは朝日よ。貴方に、アイドルをやる価値なんてないわ。」
朝「ふざけるのもいい加減にしてるれるかな!僕は……」
夜「今日集まったファンが、全部私のファンだと思う?」
朝「っ……!」
夜「今まで朝日が頑張ってきたから、ソロライブができたのよ!それも、朝日のファンがそれを望んだから!」
朝「えっ……?」
夜「確かに、私のファンが邪魔をしたかもしれない!だけど!あそこには朝日だけを見にきた人がたくさんいた!それなのに!私の飾りなんて、そんな事言うなら、ファンに謝ってアイドルなんかやめて!」
あの時はむしゃくしゃしてたなぁ。
真昼にも見せない感情的な姉さんは、まるで昔と変わらなかった。
今となれば恥ずかしい思い出だよ……。
小「だから、朝日先輩には受け取って欲しいんです!」
そうやって言われると、断れないよね……。
まぁ、大好きな小春ちゃんからの誕生日プレゼントを貰わないわけ無いけど!
朝「うん!ありがとう!小春ちゃん!」
僕は、迷わずプレゼントを受け取った。
小「……香澄朝日先輩、15歳のお誕生日おめでとうございます。これからも、頑張ってください!」
そんなごくありふれたセリフに、凄く胸を打たれた。