「おせーよナオミ…って、誰!?」
「うるせぇハゲ。村山に決まってんだろ」
おれは今、ナオミちゃんに手を引かれてみんなの前にいる。こんなに足出すの、久しぶりすぎて恥ずかしい…
「え、よしきちゃん!!?」
ヤマトといつもの痴話喧嘩を始めたナオミから少し距離をおくと、雅貴が近付いて来た。
「ま、まさきちかいっ」
「ごめんごめん」
「結構変わるもんだな」
いつの間にか日向もいて、二人にジロジロ見られて恥ずかしすぎてヤバイ
「おい二人とも、村山が困ってるだろ。離れろ」
「……」
二人の視線に戸惑っていると、ロッキーとスモーキーが二人の肩をグイッと引いた。
「あと村山」
「な、なんだよ!」
「似合ってるぞ。その格好ならうちの店で客としてもてなしてやる」
「うるせぇ!」
似合ってるとか言われておれの頭はキャパオーバーだ。琥珀と九十九も、無言でおれの頭を撫でる
「他の姿も見てみたい…」
「おれはいつもの学ランに戻りたい…」
スモーキーの顔が、表情筋は一切動いてないのにキラキラしてるのが分かる。やべ、涙出てきた…
「いやー、ホントかわいい!な、広斗!」
「コブラもなんか言ってやれよ」
雅貴と九十九が声をかけた方をチラッと見ると、興味なさそうにしているコブラちゃんと広斗がいた。
「に、似合うか?」
「「……」」
勇気を振り絞って二人に近付いて聞いてみると、返ってくるのは無言。
「み、みんなが似合うって思うなら、定例会議の時だけ学ランやめて女っぽい格好「似合ってねぇ」
「ーーー…は?」
おれの言葉をさえぎったのは、広斗だった。
「いつもの学ランでいい。着替えろ」
「ナオミ、村山を着替えさせろ」
コブラにもそう言われ、おれはショックを受けた。でも、それ以上に大きかったのは
「……んだよ、コブラちゃんと広斗ちゃんのバァーカ!!」
「「は?」」
『え?』
怒りだった。
「せっかくナオミちゃんがやってくれたのに!似合ってねぇってひでぇよ!褒めろ!おれの勇気を返せバカ!!アントニオ猪木バカ!ブラコンバカ!!」
『ブッ』
おれの言葉に、コブラと広斗以外のみんなが吹き出した。そんなことはおかまい無しだ
「鬼邪高あたりはいつも通り何もなかった!これでうちの報告はおしまい!帰る!!」
「おい村山!」
「ありがとねナオミちゃん!やっぱり似合わねぇみたいだよ!今度洗濯して返すねっ」
それだけ言って、おれはイトカンを出た。
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「コブラと広斗のやつしねばいいのに…ぶぎゃっ」
ブツブツ文句を言いながら歩いていると、誰かにぶつかった。
「いってぇ…誰だよ…って轟?」
「前ちゃんと見ろよバカ女…って村山」
「村山さん、だろ」
ぶつかったのは轟だった。学校以外で会う轟は、制服姿なのにどこか新鮮な感じだ
「アンタ今日、定例会議じゃなかったっけ?学ランはどうしたわけ?」
「……っるせぇな、ほっとけよ後輩は。頭にしか分かんないことだってあるんだよ。」
「はいはい。…村山サン、送ってあげるから泣かないで」
「泣いてねぇわバーカ」
とりあえず、轟に甘えて送ってもらうことにした。するりと手を繋がれて、なんだか安心する
「轟ぃ」
「なんだよ」
「手汗すげぇぞ」
「黙れよクソ女…」
適当にぶらぶらして、家に帰るんじゃなくて公園に寄った。
「あ、そういえば今日喧嘩の用事があったんだった」
「は?誰と」
「隣町の奴。どうしよっかなー…これ汚したら、ナオミちゃんに怒られるよねぇ」
「あっそ。速く行ってやりなよ。行かないならおれが行くよ」
「うるせぇ。じゃ、ここでいいわ。行ってくる」
轟と離れて、一人でぶらぶらと隣町へ向かう。
「どんな強い奴かなぁ…むぐっ、」
すると、突然後ろから襲われた。ハンカチを口に抑えられて、おれは意識を手放した。