むかーしむかし、ある所に、お姫様と王子様がいました。
ファルルの小さな声が部屋に響く。誰もいなくなって静かになってしまったプリパリでは、小さな物音でさえ大きく街中に響き渡る。その音を利用して、ファルルにピアノを弾いてもらって踊ったり、缶やフライパンを叩いて音楽隊ごっこをしたり、路上ライブをしてみたり、ひとしきり遊んで飽きたら眠りにつく。ファルルはいつもニコニコと変わらずに笑顔で付き合ってくれる。
お伽噺を読んでくれるファルルの声を聞きながら目を閉じ、文字から想像される映像を頭の中で流す。星空の下、お姫様と王子様が舞っている。キラキラと輝く星と月が二人を照らしている。そこに天使と悪魔が現れて、王子様がお姫様と結婚し、永遠に縛られ、自由を奪われる未来を選ぶか、王子様が自由なまま友達として会い続ける未来を選択するかをお姫様に選ばせる。
…そういえばあろまとみかんはパパラ宿で元気にしているだろうか。昔から変わらず仲のいい2人は、遠く離れた土地に居る。悪魔と言えどもとても優しいあろまに、天使の名がふさわしいみかん。2人は自分の自慢の友達だ。…とても大好きなのだが、たまに二人はあろまげどんのまま続けたかったのではないか、自分が足を引っ張っているのではないか不安になってしまう。…その不安もライブ中には消え失せるのだが…
ファルルが続きを読む。お姫様は王子様が縛られる未来を選ぶのだ。理由は自分が寂しいから。それに怒った天使は姫を叱り、反省した姫は王子様と結婚しない未来を選んだ。王子様はショックを受けたが、草原で動物と戯れる天使を見て恋に落ち、天使と王子は結ばれた。心優しい天使が幸せになったのでみんな幸せになって、姫もそれを見てにこりと微笑み終わり。
…この物語がどういう意味なのか、わかった。わかって、しまった。冷や汗が頬をつたい落ちる。目をうっすらと開け、ファルルに声をかける。
「……ねえ、ファルル」
言いたいことは一つだけ。
「……後悔、してないガァル?」
返事は決まっているのに。
「………えぇ、もちろんよ、ガァルル。後悔なんて…する訳ないじゃない。」
そういったファルルの顔は、暗闇を月明かりを頼りに見ることしか出来なくともわかるほど、綺麗で、澄んでいて、愛らしく、恐ろしい程に優しい笑みを浮かべていた。
ありがと〜!頑張るね!