「お、シッマ見い、あれ飯ちゃう」
「ほんまか!」
煙草に火が点きそうなほど眩しい炎天下の中、一匹の賑やかなチワワと共にアスファルトの上を歩く。
一歩、一歩と足を踏み出すだけで流れ落ちる汗がうっとおしくて、いっそこいつのように短くしてしまおうかと考えて、ゲンナリした。似合うわけないやん、こちとら顔面偏差値12やぞ。114514の奴になんか敵うはずあらへん。俺頭働いてへんな、これ。
しかし、本当に鬱蒼とした街だ。これが城下町だなんて笑わせる。
街並みを鼻で笑って、煙草を咥えた。
「あ!?なんでお前吸うてんねん禁煙や言ったん大先生やろ!」
「人おらんしええやろ」
「俺も吸う、一本くれ」
しゃあないなと言って一本だけ渡す。ライターも渡して、「あとで代金払ってな」と言うと「ちっちゃい奴やなぁ!」と大声で笑う声が返ってきた。相変わらずうるさい奴やなぁと思う。うるさいのは嫌いやないから、むしろオッケーなんやけど。
今日、なぜ俺たちがこんな雰囲気の悪い街にいるか。それは近々起こるであろう戦争のための偵察であった。
血統のみで君臨した国王。先代の苦労や知恵でやっと得られた国民や土地を軽視して、日々遊びつくす毎日…らしい。これは外交官であるオスマンが赴いた際に抱いた印象らしい。
俺は今までそれを見たことがなかったからあくまで「らしい」とだけ認識していたけれども、この街の様子を見る限り間違ってはいないだろう。日中であるのにこの静けさ。閉まった店。国民の困窮した生活が見て取れる。かわいそうに。もうすぐ俺らが救ってやるから。待っててな。
「甘っ」
「当たり前やろキャスターマイルドやぞ。マイルドやマイルド」
「大先生お前いっつもこんなん吸っとるんか…」
二人して煙草を吸いながら歩く。コネシマの大きな声が一層大きく聞こえた。