「人間のガキが……ふざけやがって、やっちめえ!」
トロルの親方の号令と共に、部下のトロル達がコートの若者を取り囲み、一斉に襲いかかる。
「ふん。」
若者が無造作に剣を振るった様に見えた直後、一迅の風が通り過ぎた。若者は大剣を背に収めれば、風圧に怯んだ小物トロル達を尻目に囲いの外へ出て、トロルの親方の元へ歩いていき。
「……な、何してやがる野郎共!人間のガキ一人に何を……。」
「ああ、無駄だよ。あとはあんただけだ。」
「なっ―――」
若者が指を鳴らす。直後、小物のトロル達は一瞬で細切れの肉片に変わった。
「おのれいっ!捻り潰してくれるわ!」
しかしトロルの親方もこの程度で諦めたりはしなかった。先程部下が全滅したのも何かのトリックに違いない、一対一なら人間、それもこんな若造に負けるはずがない……が、トロルの親方の慢心は裏目に出た。
「"滅殺(バニッシュ)"」
トロルの親方が目の前に来たとき、若者が小さく呟けば閃光が走った。トロルの親方は腕だけ残して、跡形もなく消滅していたのだ。それは5分に満たない一方的な虐殺であった。若者は捕らわれの村人たちへ近寄れば、再び小さく呟いて不可思議な術を発動し、彼女らの拘束を破る。
「安心してください。他の連中は俺の仲間が片付けています。もう、奴らに怯えることはありません。」
若者は優しげに語りかけ、暫くして村人達の感謝の嵐に揉まれた。抱き着かれ、拝まれ、接吻され……。困った顔をしながらも、満更でもない様子の若者であった。
【続】