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〜阿笠邸にて〜
―阿笠博士は、地下室のドアの前に立ち、恐らく研究に没頭しているであろう、灰原に声をかける。
「―哀君、夕食が出来たぞ」
その返事は、博士が思っていた通りの物だった。
「…要らないわ」
博士は溜め息をつきながらも、諦めずに声をかける。
「じゃが哀君、今日の昼食も食べとらんかったろう」
「一食二食、抜いたところで死にゃしないわ」
―こうしていると、灰原が阿笠邸に来たばかりの頃を思い出す。灰原が阿笠邸に来たばかりの頃も、このような事が多かった。
―最近は少年探偵団のお陰もあってか、明るくなり料理も手伝ってくれる事も多かったのだが…
「入るぞ、哀君」
博士は灰原の居る地下室のドアを開け、中へと入った。
中には疲れて、やつれた顔の灰原が居た。目の下にはクマまで出来ていた。
「哀君、少し寝た方が…」
言いかけた博士を灰原の声が遮った。
「余計なお節介は要らないわ‼私の事は構わないで…この地下室からも、出てってちょうだい!」
灰原は大声を上げ、立ち上がった。
ポカンとした顔の博士を見て、我に返ったのか再び座り直す。
「―哀君、まだ“あの薬“の研究を続けておるのか?」