キセキの世代1人目
あたしが征ちゃんと出会ったのは
入学式の日
の翌日である
何故翌日かというと、そこんとこは察してほしい。 寝坊して起きたときにはもう学校が終わってたのだ
「はぁ…やっちゃったわ。なんで目覚ましかけ忘れてんのよあたし!」
そんな文句を言っても過ぎてしまったものは仕方がない。 ガラガラと教室の後ろのドアを開けて中に入る。
すると何人かがバッとこちらを振り向いた。まだみんなクラスに慣れてないのか教室は静まり返っていた。
なんか居心地悪いわね…っていうかあたし、席が分かんないんだけど…
「もしかして、昨日来てなかった子?だったら席あそこだよ」
あたしが突っ立ったまま教室をキョロキョロ見回していたから、不思議に思った女の子が気づいて席を教えてくれた。
きちんとその子にお礼を言って教えてもらった席に行った。
窓側から二番目の列の前から二番目
あんまりよくない席ね…
ちょっとむくれながら席に座ると左隣から視線を感じた。
誰だと思い横を見ると赤髪の少年と目が合った。お辞儀をされたので慌ててこちらもお辞儀を返す。
「君、昨日学校来なかったよね」
「昨日は家庭の事情ってやつで…」
ただの遅刻だ、とは情けないと思われたくないので言えない。
「そうか、俺の名前は赤司征十郎だ。よろしく」
「あたしはナミ!よろしくね、赤司くん」
よっし!友達1人目ゲット!
あたしを見ながらこの男の子は優しく微笑んだ。なんかすごくいい人そうね…
*
「ナミさん、昼ごはん一緒に食べないか?」
昼休みになって赤司くんに声をかけられた。やっぱりこの人優しい。
ちなみに今日も遅刻ギリギリだったので、朝ごはんは食べてない。だから腹ペコだ。
「ええ、食堂に行きましょう!あとあたしのことは呼び捨てでいいわ」
「分かった、ナミ」
*
簡単な授業を終え、やっと帰れる時間となった。あたしは思い切り伸びをする。
「やっと帰れるー」
「ナミは部活入らないのか?」
「うん。面倒だから入らないの。赤司くんは?」
「俺はバスケ部に入る」
「そうなの…がんばりなさいよ!赤司くん!」
「…俺はナミと呼ぶのに、君は赤司くんってなんだか他人行儀だな」
「え、何よ急に…」
「よし。ナミ、君も俺を下の名前で呼べ」
「はあ!?あ、あたしあんたの下の名前なんて長くて覚えてないわよ!」
「じゃあ、呼びやすい名前で呼べばいいじゃないか。征十郎だから…」
「征十郎…征…征ちゃん…征ちゃん!征ちゃんは?」
「は?」
「征ちゃん、いいじゃない!かわいい!短い!覚えやすい!」
「…分かった。またな、ナミ」
「うん!バイバイ征ちゃん!また明日!」
うんうん
やっぱりこの人は優しいわ
ーーーー
「くっ、あの日あの時征ちゃんを優しいと思った自分を殴りたいわ」
「なにか文句あるのか?お前が勉強教えてほしいって言ったんだろ」
「スパルタ過ぎるわ!もっと優しく教えなさいよ!!」
「その問題解けなかったら、この問題集を今日中にやれ」
「いやあぁ!!」