蘭は幼き頃の思い出を思い出していた。
そう、あれは小学一年生の時。
母親が居なくなって初めての誕生日の事だった…
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蘭「うぅ…お母さん、お父さん…」
父親の毛利小五郎も仕事のせいで
出掛けており、不在だった。
蘭(寂しいよぉ…)
今日は年に一度の自分の誕生日。
なのに誰もいないなんて…
ピンポーン。インターフォンが鳴る。
蘭(誰だろ…)
蘭はそっとドアを開ける。すると―
新一「よぉ蘭、何泣いてんだよ?せっかく祝いに来たって言うのによ」
蘭「新一?!来てくれたの?!」
新一「オメーが一人ぼっちだって言うから…まぁ、んな事どうでも良いだろ?ホラコレ、ケーキ。母さんが持ってけって…」
そう言って持ってきたケーキを差し出す。
しかも来てくれただけでなく、ケーキまでも…
蘭「ありがとう、新一!最高の誕生日になったよ」
そう言って、笑顔になる蘭。
新一「あ、後、コレ」
新一は少しだけ照れながら、蘭にある物を手渡す。
蘭「?何、コレ」
蘭は首を傾げる。
新一「良いから開けてみろよ」
蘭は言われた通りに中を開けた。
蘭「わぁっ!可愛いー!髪飾り?」
桜が形どられた、可愛らしい髪飾りだった。
新一「オメーへの誕生日プレゼントだ!」
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そう、あの時に新一から貰ったプレゼントと
似ている。今回も桜が形どられた髪飾りだったのだ。
蘭「新一…あの時の事、覚えてくれて?」
よく見るとメッセージがついている。
『蘭、誕生日おめでとう!直接祝えなくて悪いな。でも、プレゼントだけは渡したくてよ…コレ、ガキの頃のあの髪飾りに似てねぇか?無くしたってオメー騒いでただろ?ちょっとガキっぽいかもしれねーが似合うと思うぜ?』
新一…。やっぱりあの時の事、覚えてたんだ―。
蘭は髪を結った。勿論、この髪飾りをつけるために…
あの時の髪飾りは無くしてしまった。
代わりの髪飾りを探しても、なくて。
でも…こうしてまた、戻ってきたのだ。
新一、ありがとう。
蘭は呟いた。
♥おしまい♥