耐えきれなくなって練習スタジオを抜け出した。
たまたま通りかかった弦巻さんに
「あら、有咲じゃない!どうしたの?」
と声をかけられたが、私は弦巻さんを無視して走った。
悪いことをしてしまった。あとで謝ろう。
いつもならそう考えるが、そんな気持ちはぐちゃぐちゃな心が覆い隠す。
どこだ…ここは。
走って、走って、走って。どこかわからないところに来てしまった。
スマホの地図で確認すると、隣の市に来てしまったようだ。
と言っても、そこまで遠くはない。今なら戻れる。
ここからもっと遠くに行けば、もう香澄達に会えなくなる。そんな気がする。
もういいだろ?だって、香澄達は私を認めていない。会わなくたって、何も変わらない。
おい、早く戻れよ。ポピパとして認められていないだけで、香澄達は私の大事な友達だ。
私が2人、話をしている。
それでも私はまだよくわからない。
どうすればいいんだよ。
どうすればいいんだよ。
助けてよ
誰か
誰でもいいよ
誰でもいい
お願い
「有咲!いた!」
あぁ、結局お前が助けてくれるんだな。香澄。
「ポピパの一員って認められてない?そんなわけないでしょ!?
有咲は…れっきとしたPoppin’Partyのキーボード担当でしょ!?
ポピパへの情熱?有咲はしっかり足りてるよ。
私やおたえやりみりんやさーやも知ってるよ。
いつも練習が終わった後も、少し時間に暇があったら、練習してるでしょ?それはポピパへの情熱だよ」
「私…ポピパにいていいの…?」
「あったりまえでしょ!」
あぁ、涙が溢れて止まらない。
なんの涙?
悲しいの?ううん、ちがう。
悔しいの?それもちがう。
嬉しいの?そう。それが正解。
「ほら、有咲。一緒に練習しよ?」
差し伸べられた手のひらを。
ぎゅっと握る。
私はPoppin’Partyの一員だ。