鬼滅の刃 「幸福」

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3:匿名さん:2019/09/14(土) 02:51 ID:sjY


大正に入って花街は活気が落ちたと言われている。理由としては政府の介入もあるのだが割愛するとしよう。相も変わらず遊女も太夫も存在してはいるが西洋風の喫茶店(現在のキャバクラのようなもの)に客を取られ始めているらしい。性行為という長時間の労働をせずに済み、安心かつ安全に男の話を聞くだけの仕事であるそれは働いている人間にも評判らしい。

知ったことじゃないが、と一人ごちて煙管を吸う。白い煙を吐き出して花街を眺めた。男と女が手を組んで歩いている姿を見て馬鹿を思い出す。あの馬鹿は今頃何をしているのだろうか。一時期は「一緒に柱になりましょう。」と死ぬほどうるさかったが俺が逃げ続けた上にお館様本人に「やりたくない。」と伝えた結果あいつだけが柱に昇格した。正直下弦を倒せたのなんてたまたまだし、あいつと俺の相性がよくたまたま五体満足で生還出来ただけなので柱になって危険を背負うのは俺はお断りだった。あのバカは違うようだが。

以前、何故そこまでして戦うのか聞いたことがある。あのバカは確かに妹に比べりゃ背も高い、力もある。だが自力は男に負けるので呼吸と技でカバーしている状態だ。そんなんでよく死なないなと何度か思った。そもそも女は嫁に行ってガキを産んで育てる、それが仕事だ。だからこそ生き急ぐあいつの考えは理解できない。

助けたいのだと笑った。自分たちのように親を亡くす子を少しでも減らしたいと笑った。

慈善事業と言えどただ1人の思想だ。いかに素晴らしくてもどこにも影響は及ぼせない。絵空事だと切り捨てて俺は煙管を吹かす。一応任務は花街の鬼の調査だが死ぬほどどうでもいいし勝手に食っててくれればいいと俺は思う。そもそも花街に来る人間なんざろくでなしのクソ野郎ばかりだ、別嬪の遊女以外ならぜひとも食い散らかして欲しい。

そう思考していると伝書鳩がやってきた。他の隊士は鴉なのだが俺だけ鳩だった。嫌がらせかなにかではないかと疑っている。珍しくその鳩は足首に文をつけていた。基本的に俺に文を送ってくるような奇特者はあいつかお館様くらいなのでお館様だろうかと思いながら文をめくる。

端的かつ簡素な、重みのある文だった。


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