第二話
*突然の来訪者*
ーーベルと王子が図書館で読書をしていると、
足音が聞こえ、そのすぐ後にノックする音が響いた。
「入って」と王子がドア越しに告げると、荒い息遣いの
コグスワースの姿が現れた。
横に、ルミエールとポット夫人も控えていた。
「まぁ、コグスワース!一体、どうしたの?」
ベルは座っていた安楽椅子から立ち上がり、問う。
コグスワースは手持ちのハンカチで汗を吹きながら
話し始めた。
「それが……お客様がお見えになっていまして……」
「来客の予定は無かった筈だけれど……誰だろう」
呟くように、王子が言うと、ベルは
「もしかしたら、パパかもしれないわ。
ホラ、良く顔が見たくなった、って来るでしょう」
と、思い付いたように言った。王子も、彼女の言葉に頷いた。
しかし、コグスワースは首を横に振る。
「いえ…モーリスさんでは無いのですよ、ご主人様。
何でも、隣国のプリンセスだそうで……王子様にお目通りを
願いたいと申しております」
「それはそれは美しい女性です。まるで天使のように」
コグスワースの言葉の後に、ルミエールが要らぬ一言を
付け加えた。案の定、コグスワースに睨まれ、彼は
睨みかえした。
王子は驚き、思わずベルと顔を見合わせる。
しかし、その後すぐに彼はこう言った。
「ではお客様をお迎えしよう!コグスワース!
ルミエール、君は料理でおもてなしの準備を、
ポット夫人、君は甘く温かいお茶を淹れてくれ!」
ルミエールはうやうやしく一礼し、その場を離れた。
恐らく、調理場に行くのであろう。ポット夫人も彼に
続いて図書館を後にした。コグスワースは
「来客をお通しします」と告げ、出ていった。
「隣国のプリンセス……どんな方かしら?
とても気になるわ。私も、貴方と一緒に居て良いのかしら?」
ベルは、彼らが出ていき一段落すると、おずおずと
王子に問いかけた。
「勿論さ、ベル!隣国のプリンセスにも、君を紹介したいし」
と、にっこり微笑み、王子は言った。