「とにかく、読んでみましょう」
ジャスミンは意を決してそう言った。
日記をどんどんと読み進めていく。
「興味深いことが記してあるわ」
ホラ見て、とジャスミンはアラジンに日記を渡す。
「君の母上様には、宮殿の外に、アグラバーの市場に
友達……というか相談相手がいたのか?」
アラジンは呟いた。
「昔は、普通に宮殿の門は開け放たれていたから
有り得ないことではないわ。今もそうだけれど」
ジャスミンは目にかかる髪を払い除けながら答える。
「まあね。あ!」
アラジンは、突如声を上げた。
「どうかしたの?」
訝しそうにジャスミンは尋ねる。
「その人が裏切って、君の母上を……ということは
考えられないかな?」
アラジンは考えを口にした。
「どうやら違うみたいよ。日記を読む限りでは
その人とはずっと親しかったみたい。
そして……誰かに追われているとか、殺害予告を
されたとかは書いていないわ。残念なことに」
ジャスミンはそう言って、一旦日記を閉じ
悲しげに目を伏せた。
「でも、その人が母上の死と関係していそうだね」
アラジンは言った。
「お父様に聞いてみましょう!お母様が親しくしていた
人はいたのか、その人はどんな人だったのかを」
ジャスミンは強い意志を宿した瞳をアラジンに向けた。
「ああ!行こう!」
アラジンも強い意志を込めて頷いた。
そうして二人は王妃の日記を手に、図書室を後にした。