雨が地面を叩く音が、心地良い。
普通なら学校に行っている時間だけど、今日はそんな気分じゃなかった。
それはあの子達も同じみたいで。私と同じ、この路地裏に来ていた。
「……何、あんた達もサボり?」
なぁんだ、1人で居たい気分だったのに。ま、この子達なら別に良いけどね。
……同じ秘密を共有している仲だもの。
「こんなジメジメした日に、真面目に勉強なんてしてられないわよ」
橙色の闇――松田苺が、膝で頬づえをつきながら呟いた。
「そうよね。って言うか、私達はもう、人間じゃないから。
学校にも行ってないし、家にだって帰ってないわ」
黄色の闇――麻生林檎が、苺に同調する。
「……律儀ですよね、高本さん。闇になっても、人間からの認識を消さずに、学校にも通って。」
赤色の闇――赤羽朱が、小さな声でそう言った。
「まあ、これが1番楽なのよ。」
なんて私は強がって言ってみたけど、
「行きたかった高校、落ちたんでしょう。それなのに、どうして?」
朱は、声のトーンを変えずにそう言う。この子は人を馬鹿にしたりはしないから、きっと悪気はないのよね。大人気ないから、怒らないでおこ。
「まあ、良いの。だってこっちの方が、桃音ちゃんに怪しまれないでしょ?
あなた達だって、人間からの認識は消してないじゃない!」
「それは、自分がどれだけお前に苦しめられていたのかを、光に思い知らせてやる為よ。ねぇ、苺。」
「そうよ。あの子を見てると、いつも自分が惨めで、優しくされる度に、消えてしまいたくなったもの。ねぇ、林檎もそうだったでしょ?」
「そうね。檸檬ちゃんには本当に消えてほしいわ。」
「……じゃあ、何ですぐに殺しに行かないの」
元々仲が良いらしい林檎と苺の会話に、朱が口を挟む。
2人は不愉快そうに眉を潜めた。
『それは、あの子達が苦しむ姿を見るのが楽しいからよ! 私達に怯えて生きてもらうの。私達は手を下さないわ。
あの子達が、自分から死ぬまで追い詰めるの!!』
ザァアア……
雨音だけが、聞こえる。
また、いつもと同じ。
人を恨む弱虫が集う、この路地裏。
本当はあなた達も分かっているんでしょう?
自分達が恨んでいるあの子達が悪いんじゃなくて、自分が弱いせいでこうなってしまったんだ、って。
でも、私が桃音ちゃんに苦しめられていたのは事実。
だから、私は桃音ちゃんを許さない。私が弱いのが悪いんだったとしても、それでも私は苦しんだ。桃音ちゃんに、苦しめられた。
だから、桃音ちゃん。あなたも悪いんだよ。
>>90どこにあるのか分からなかったけど、かっこよくなった!!