「おい、ババア」
晴天の下、春のうららかな気候を切り裂くような青年の声が、無駄に大きな庭に響いた。
「あんたも、なかなか言うようになったじゃない。.....反抗期かしら。」
読んでいた分厚い本を乱暴に閉じて、女性は立ち上がった。指をバキバキとならしながら、青年の方に近寄って行く。
「こっち来んなよ」
「逃げないで頂戴。今、雷撃魔法で燃やし尽くしてくれるわ。」
雷撃なのに燃やすのかよ。いや勢いが強すぎて燃えてんのか、こりゃやべえ、などとは口に出さないように、堪えつつ青年は後ずさった。
「やっぱ、【魔女】を怒らせちゃいけねーな」
へっ、と口の端を吊り上げて煽ってみせる。
そんなに煽りに見事に乗った様子の【魔女】は、子供を脅かすような、にやりとした微笑を浮かべた。
「そうよ、もし私を怒らせたら.....」
くるり、とダンスをするかのように、ターンをし、青年の目と鼻の前まで迫ってきて彼女は言った。
「【たべちゃうわよ】」