夏が始まった。
隣を歩くのは東海林カズマ。
つい数秒前に食べ終わったチョコレートアイスの甘ったるい味が、口に残っていた。
.....不意に俺は思う。
ああ、こいつの事が好きだ、と。
カズマがギーゼから解放されてからは、特にそう思う。
何気なく髪を弄る仕草とか、にっと笑った表情だとか、太陽の光を反射してきらきら光るその瞳だとか.....話始めるときりがない。
しかし、未だに俺はこんな思いを伝えられずにいる。
.....みっともないよなぁ。
はぁ。俺はため息をついた。もやもやと心の奥の方で渦巻く黒いものをゆっくりと吐き出すように。
カズマは、どうにも冴えない俺を心配してか、ちらりと俺の顔を覗きこんでくる。
ここで「心配してくれんのか」なんて言うと拳が飛んでくるであろう。本当は仲間思いで、それでも少し照れ屋なところも好きだ。
俺は、視線を流すようにカズマの方にやった。
かちり、と音がなるように夕焼けのオレンジが映りこんだ瞳と目があった。オレンジとライトグレーが混ざりあっていて綺麗だ。
数秒、その瞳を見つめていた。カズマも目をそらさなかった。
気まずい。早く目を逸らさないと。
そう思うのに、なんでか逸らすことができない。
つか、なんでカズマも逸らさないんだよ。逸らしてくれ。
カズマの瞳に映りこんだ俺は、ああ、随分と余裕がなさそうだ。早く逃げてくれ。こうなっちゃ、俺は何をしでかすかわからねぇぞ。
つぅと、彼の白い首筋を汗が伝った。そうか。もう夏なんだよな。なんて妙に冷静な自分が言った。
ぱちりと一度瞬きをして、改めてカズマを見据えると、その頬がほんのりと赤く色づいているように感じた。でも、もしかしたら夕焼けのせいでそう見えただけなのかもしれない。
カズマは、とうとう視線を逸らした。
少し残念な気がした。その瞳をもう少し見ていたかった。
そんな欲が心に浮かんだその時、ひんやりとしたものが手の甲に触れた。
.....それはカズマの手のひらだった。
ああ。彼の事が好きだ。
だから。ほら。なんにも考えず、いつものバカな新導クロノらしく。
さっさと言ってしまえ。人生で始めての告白を。
俺はゆっくりと息を吸い込んだ。
もう、夏の暑さは気にならなかった。
>>792 これマシな方だ
>>792 もう既に書いてて草