これまでは、誕生日なんて時間の無駄だとか、必要無いだとか思っていた。
かつてのあたしは、研究ばっかりしてて、時間やら何やら、色々なことに追われてたからね。
そして、昔は孤独だった。
研究室に篭ってたから、周りに誰も居なくて、いつも独り。誕生日とはまるで無縁だ。
独りだったけど、周りの大人達は……うるさかったかな、どうだったかな……どうでもいいや。
少し過去の事を思い出してしまいそうになったけど、忘れよう。
「ハッピーバースデー、 志希!」
だって、今はそういうことを考える時じゃないし。
「誕生日おめでとう、志希ちゃん!
はい、プレゼント」
「私達が選んだのよ」
事務所入口で呆然と立ち尽くすあたしに、LiPPSのメンバーが駆け寄ってくる。
美嘉ちゃんと奏ちゃんはあたしにプレゼントを渡して、フレちゃんはなんか踊ってる。
周子ちゃんは……「驚くなんてらしくないじゃーん」とか言いながら小突いてくる。
……そんなの、あたしだって知ってる。
昔はこんな事じゃ動じなかったはずなのに、なんで。
「……それは、“あなたが変わったから”よ」
あたしの考えてる事が分かったのか、奏ちゃんが不敵に笑ってそう言う。
あたしが、変わった?
……確かにそうかも。
今みたいに感情に動かされて他人に表情を読まれるなんて、昔のあたしが知ったら笑い転げるくらいだと思う。
「そうかもね」
あたしはそう言って、前へ歩く。
どこに行くかって? 勿論……
「キミに……プロデューサーに、変えられちゃったからね〜」
あたしを変えてくれた彼の元へ。
すると、周りが少しざわめく。
そうだよね、プロデューサーを狙ってるアイドルはこの事務所に何人もいる。
あたしは、プロデューサーに無意識に父性を欲していつの間にか好きになっちゃってたって感じだから、ちょっと違うかもだけど。
……ともかく。
あたしが変えられちゃったのは、プロデューサー……そして、LiPPSのメンバー、美波ちゃん、飛鳥ちゃん……沢山の仲間達が居たから。
「ね、みんな」
あたしの声に、皆が不思議そうな顔をする。
「ありがとね」
―――――18歳になった今日くらいは、心からのありがとうを言ってあげるんだ。
>>94-100
まで志希にゃん誕生日祝いしかしてない件について