次は数学
empty の中盤てて目線(じんは精神的なあれから意識のある植物人間みたいになってるよ)
______
整った顔だ。俺の大好きなひとの顔。その「大好き」の意味は歪んでいるのかも知れないけど。
ぱちり、と瞬かれた目は俺の方を見てはいない。虚空を見つめている。
人形のような無表情の中に少しだけ寂しさが滲んでいる、ような気がする。それは俺の都合のいい幻覚なのかな。
「っ.....」
胸がぎしりと軋むようだった。
痛い。痛いよ。
ヒョンがこんなんだと、俺は苦しくって仕方がない。そうだ、それこそあれだ【死んでも君だよ】、俺はお調子者でワールドワイドハンサムでどうしようもなく優しいキムソクジンがいいんだ。例え死んだって、来世になったって、そんな君に会いたい。そんな君を好きになる。
「でも一番痛いのはヒョンだよね...」
彼の白い頬に触れた。柔らかい。やっぱり生きてるんだよ、ジンヒョンは、なんて当たり前のことを思った。
「ねぇ起きて」
起きてよ。
俺はぐい、とジンヒョンをこちらに近づけた。
彼の甘いような上品なような....とにかく俺の大好きな匂いがした。
あは、見てよこれ。キスできる距離だ。なんだよ。なんで、あんなに俺がしたかったことが今、こんな形で叶えられそうなんだよ。
「起きてよジンヒョン.....キス、しちゃうよ。ほら」
する気なんて毛頭なかった、といったらちょっぴり嘘になる。でも俺はあと唇まで数センチ、というところで動きを止めた。
いいや。
止めざるを得なかった。
だってほら。前が見えない。
目の前がぼやけている。そこに広がるのは淡い色の世界。彼の姿も歪んでいる。唇の位置だって分からない。
「ジンヒョンっ!」
は、と震えた息を吐く。泣いてんのか俺は、なんてことに今気がついた。
「殴ってよ、俺を!この最低な俺を!!貴方が傷ついた分を、俺にも背負わせてよ...っ」
ああ、貴方を助けられなかった。
きっとヒョンは全部ひとりで抱え込んで、どうしようもなくなって、それでこんな状態になったんだ。
彼の頬からずるりと手が滑り落ち、肩で止まる。
肩をつかんで、ただ震えて泣くことしか出来ない。
「ごめんなさい...ヒョン.....」
顔をゆっくりとあげた。
すると、丁度そのタイミングで彼の体が傾いた。
重力に耐えられなくなったのか。
それとも。
....なんてことは後で考えよう。
ちゅ、
とか可愛らしいものではなかった。
むしろ、がつり、と歯と歯がぶつかり合う音がするくらいに色気のないキスだった。
そのまま彼は俺に寄りかかってきた。唇は一瞬で離れた。
しばらく俺は呆然としていた。
やがてジンヒョンの頭を撫で付けながら呟く。
「ったく...ヒョンってば.....」
今のは事故か、故意なのか。
でもジンヒョンだったら。
きっと彼は俺が泣いていたら慰めてくれる。キスをするかどうかはわからないけど。
....もしかしたら、まだ彼の体の中にジンヒョンが残っているのかもしれない。
俺はそう信じて、ぎゅっと彼の細い体を抱き締めた。
>>257 最初 半ば