ゴロゴローと音を立て、メルの家の方に雷雲が近付いてくる。
メルは雷というものは知らなかったが、よいものではないことはわかっていた。
今まで寂しいながらも、静かで穏やかな時間は好きだった。
>>843のつづき
空は暗くなり、明かりの点いていなかった彼の部屋も不気味に暗くなる。
ヒロコの声も聞こえなくなり、不安な気持ちでいっぱいになる。
庭には物干し竿に洗濯物が干されているまま。
――ポタ、ポタ
空から一粒の涙が落とされる。しくしくと空が泣いている様だったが
次第に号泣するように大粒の激しい雨が降ってくる。