ミリオタの呟き2

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415:Invincible:2019/09/23(月) 19:39

血生臭い長月の風は過ぎ去り、神無月の夜風が連合軍の塹壕を吹き付けていた。だが、月は変わっても、硝煙の臭いと腐臭は、米兵たちを不快にし続けた。新たに敵陣地攻略に参加した第五海兵連隊の兵士らも、最初は、1000ヤードの凝視している第七海兵連隊の将兵らの肩を叩いて「ご苦労様、俺たちが来たからもう安心だ」などと呑気な事を言っていたが、今では第七海兵連隊や陸軍の第321連隊と同じ気分を長いこと共有している。

そんな彼らにとって一番不快だったのは、睡眠不足である。上層部が、日本軍の夜襲を恐れて、照明弾を毎時毎時撃つものだから、煩く、眩しくてまともに寝てられない。それだけではない、上層部が夜襲恐怖症を拗らせたせいで、就寝が交代制にされたのだ。起きている間は、見張りをやる事になる。いつ、日本兵に狙撃されるかという恐怖と戦いながらである。上層部のこういった対応は、果断であったし、効果もあったのだが、前線の兵卒には傍迷惑な話であった。

ある日の夜、歩哨のムーア一等兵は、同期のキャンベル一等兵と共に、気だるそうに日本兵のいる陣地を見張っていた。キャンベル一等兵が欠伸をした時、2人の顔がパッと明るくなり、聞き慣れた爆音が唸った。味方が照明弾を撃ったのだ。そして、ムーア一等兵が伸びをして、

「綺麗だな」

と独り言のように言った。この言葉が、彼が最期に発した言葉になった。一発の銃声とともに、一等兵の顔面は吹き飛び、血と脳漿を撒き散らしながら一等兵は地に伏した。キャンベル一等兵は、ムーア一等兵の死体を見て、顔を引攣らせると、数歩後ずさりして、

「ジャップだ!」

と断末魔のように叫んだ。そして、それは彼の断末魔となってしまった。彼は、ムーア一等兵の亡骸に折り重なるように斃れた。

彼の叫び声を聞いた米兵たちが一斉に飛び起き、塹壕によじ登って、射撃を始めた。撃ち合ってまもないうちに、新兵たちが転げ落ちてくる。1000ヤード先を凝視しながら。


Invincible:2019/09/23(月) 19:39 [返信]

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