「そなたは何を言ってるのか。ここは某の屋敷だぞ! それにしても変わった屋敷だな.....」
訳のわからないことを言う源太郎さんに私はもう呆れる。半ば集合住宅の長屋ではなく屋敷とは金持ち...?
「もう出てって頂戴! ここは私の家なの! 今は令和時代よ!」
さっきから訳のわからないことを言い続ける、江戸男の源太郎さんの髷を掴んでグイグイ引っ張る。
身長158cmの私からしたら、源太郎さんの背丈は私と同じくらいか少しくらいに見える。
ふと、中学生の時に習った、昔は平均身長が低かったことを思い出した。
私は、女にしては力のある方らしく、武士らしき源太郎さんも軽々と玄関の外に押し出した。
ふう..... 訳のわからないオジサンが出ていってくれてよかった。やっと顔を洗える。
洗顔料を指にチューブのように出し、顔につけようとした時だった。
>>826の続き
―――ドンドンドン!!
人の家の玄関を叩くのは誰だ。また、源太郎さんなのか。
それにしても朝から大きな音出さないでほしいよね。
「なに!? 源太郎さん? 朝っぱらから大きな音を出さないで!」
近所迷惑な行為をした彼を叱る。身元もわからない、江戸男、本当によくわからない人を叱るとは私は一体――
すると、源太郎さんが私の家の表札をまじまじと見つめた。
「そなた、たっ、たぬまと申すか?」
あまりにも震えた口調で彼が言うので、私も少し驚いた。
私の名前は、田沼 夢子。 こんなの当たり前だ。
でも、確か、源太郎さんの名前って――――