あ、金魚泳いでる。「もう家に来ないでほしい」、そう彼女に言われたときに思ったことだ。
一週間前、彼女と一緒に行った夏祭り。金魚すくいで二匹の金魚を取って、それぞれ一匹ずつ飼うことにした。が、僕の水槽を泳いでいた一匹は、すぐに死んでしまった。
だから、僕の目を真っ直ぐ見つめてくる彼女の背景が赤色の尾びれだったとき、そんなことを思ってしまったのだ。あ、金魚泳いでる。
さて、僕とて「もう家に来ないでほしい」の意味が分からないほど鈍感ではない。二人きりで会う、この関係を終わりにしようということだろう。
「……聞いてる?」
静かに首を縦に振った。聞いてるよ。息を吸う度に、次は言葉を吐こうと思っているのに、掠れた空気が喉を通り抜けるだけなんだ。
それは、どういうこと? どうして? 口に出そうと思ったのに、喉から零れ落ちるのは意味のない母音ばかり。
僕は嫌だよ。意を決して大きな声を上げたつもりだったのに、言葉になりたかった二酸化炭素が唇から溢れ出て、彼女の瞳と赤色の尾びれが大きく滲んだ。
好きな人の前で泣く × Just Be Friends
なんだこれは
>>465をなかったことにしようとする私さん(してない)